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【紙のソムリエ】番外編 シート先輩とコマキさんの紙に関する四方山話38 ボイラーと燃料

「おはようございます、シート先輩、明けましておめでとうございます。」
「おはよう、コマキさん。お休みは楽しかった?」
「はい。久しぶりに友達と会えました。先輩は帰省されたのですよね?」
「久しぶりに姪と会ったら、背が伸びててびっくりした。」
「画面では分からないですよね。」
「義兄の家系はみんな背が高くて。会うといつも、製紙工場のボイラーの煙突を思い出すんだよね。」
「そこまで?!」

「今更な質問で申し訳ないのですが、製紙工場のボイラーってどんな役割を果たしているのですか?」
「そうか。抄紙機や塗工マシンなんかについては入社したときの研修で習うけど、ボイラーの話ってあまりしないよね。ボイラーは水を温めて蒸気を発生させる装置なんだけど、製紙工場ではこのボイラーには主に3つの役割があるんだ。」
「3つ?」
「簡単に言うと、回収、乾燥、発電、だね。」

「話の前提として、紙をつくる工程を確認しておこうか。コマキさん、紙をつくる手順は覚えてる?」
「はい。クラフトパルプ法の主な工程だと、

蒸解 チップを薬品で煮て繊維をバラバラにし、パルプ化する工程
調成 パルプを解きほぐし、薬品を加え、ごみや空気を取り除いて紙の原料(紙料)をつくる工程
抄紙 紙料を網に吹き付けてシート化し(ワイヤーパート)、圧力をかけて水分を絞り(プレスパート)、熱を加えて乾燥させ(ドライヤーパート)、品質を整えて巻き取る工程

ですね。」
「そうだね。そのうち、蒸解工程で『回収』『発電』、抄紙工程で『乾燥』がボイラーによって行われている。まとめると、

回収 チップは蒸解工程を経て、パルプと黒液(リグニンなどパルプにならない部分が使用後の薬品に溶けたもの)に分離される。この黒液をボイラー燃料として燃焼させることでパルプ製造のためのエネルギーを回収するとともに、燃焼灰も処理され、パルプ製造のための薬品として再生される。
乾燥 ボイラーでつくられた蒸気の一部が数種の工程を経て抄紙工程のドライヤーパートに送られ、ドライヤーを温めて紙を乾燥させるために使われる。
発電 ボイラーでつくられた蒸気でタービンを回し発電する。生じた電気はパルプ製造や抄紙工程で使われる。

薬品も熱も蒸気も、ボイラーを中心に無駄なく利用されて、再生される。ある意味この工程も、製紙が循環型産業である象徴かもしれないね。」

「じゃあ、ボイラーの燃料は黒液なのですか?」
「日本製紙連合会さんの資料によると、2020年の紙パルプ産業のエネルギー構成では、回収黒液が34.0%、石炭が30.4%となっているね。ガスが9.6%、重油が6.4%だけど、廃材が7.9%、廃タイヤも5.2%を占めている。黒液はチップをパルプ化する工程で回収されるものだから、古紙を主原料とする工場では発生しなくて利用できないんだけど、その代わりにバイオマス燃料や廃棄物由来の燃料が使われているんだ。脱炭素のためにボイラー燃料を石炭やガスからバイオマスに転換する取り組みも続けられていて、

・建築廃材や未利用間伐材などの木材チップ
・使用済みタイヤを破砕した廃タイヤチップ
・再生困難な古紙や廃プラスチックなどを原料として固形燃料化したRPF
・製紙工程で出る廃棄物のペーパースラッジや異物

などが利用されているんだ。同じく製紙連合会さんの資料だと、製紙産業のエネルギー構成比率に占める化石由来エネルギーは、2005年度が58.6%だったのが、2020年度には48.0%に縮小しているんだよ。」

「資源もエネルギーも無駄なく使う。使った後は再生して、再生できない廃棄物も無駄にしない。とても重要なことですよね。」
「物価高、エネルギー高の今だから、特にね。ぼくも見習わないと!」
「食品を無駄にしない、とか?」
「電気をつけっぱなしにしない、水を出しっぱなしにしない、えーっと、あとは・・・ゲームは1時間以内、とか・・・」
「先輩・・・それでは小学生の冬休みの注意みたいです・・・」
「あ・・・・・・」

※文中、敬称略