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【紙のソムリエ】番外編 シート先輩とコマキさんの紙に関する四方山話41 静電気

「おはよう、コマキさん。・・・なんか、いつもより元気?」
「おはようございます、シート先輩。やっと乾燥の季節が終わったかなって。冬は寒いのと同じくらい乾燥がつらいので。」
「ああ。うちの母もいくらケアしても手が荒れるってぼやいてたな。」
「肌荒れもですし、静電気もですね。乾燥の時期はドアノブに触れるのが怖いです。」
「静電気かあ。紙の世界でもやっかいものだよね。」

「ノブに触れるとパチッとなったり、紙がくっついてしまったりするのが静電気のせいだとは知っていましたが、それがどういう現象なのか、を改めて考えたことはありませんでした。」
「簡単に言うと、物と物が触れたり摩擦したりすることで電子が移動して物の表面が電気を帯びた状態になるんだけど、その表面にとどまっている電気が静電気。電気を通しやすい物質なら電気がとどまったりしないけど、紙とかゴムとかプラスチックとか、電気を通しにくい物質だと静電気が溜まりやすい。」
「乾燥の時期に発生しやすいのはなぜですか?」
「空気に湿り気があるときは物質表面の水分子から放電が起こるけど、乾燥して水分子が少ないと放電が起きないから、ということらしいよ。気温が25度以下、湿度が20%以下になると静電気が起きやすくなるという話だね。」
「紙は物質として静電気が溜まりやすいから、湿度のコントロールが大切、ということですね。」
「そうだね。製紙の工程でも静電気がたまりにくい、たまりやすいの違いがあって、

ワイヤーパート
プレスパート
紙料が網の上に噴出されて水分が網から落ちていく「ワイヤーパート」、湿紙をフェルトのロールでしぼる「プレスパート」では、紙の水分量が多いため静電気は起こりにくい。
ドライパート 紙を蒸気で加熱したドライヤーに押し付けて乾かす「ドライパート」では、ドライヤーから紙が離れるときに静電気が発生しやすい。
カレンダー 回転するロールの間に紙を通し、圧力をかけて光沢をつける工程であるため、静電気が発生しやすい。

 もちろん製紙でも印刷でも機械には静電気除去装置がつけられているけど、完全に取り除くのはなかなか難しいという話だよ。」
「静電気が取り除けないと、不都合なことがいろいろありそうですね。」
「もし、対策を何もしていなければ

・断裁の時点で紙がくっつきやすいことで寸法不良やゆがみが起きる。
・印刷・加工時の重送、排紙トラブル
・静電気がゴミを吸着することによるトラブル

なんかが起こるだろうね。でも、今では製紙技術が向上して紙の水分量やバラツキが適切にコントロールされているし、紙屋さんや印刷会社様での空調管理や機械の温度管理も進んでいるから、対策をすれば過度に恐れることはないと思うけど。」

「私も対策はそれなりにしているつもりなのですが、やはり乾燥の時期は何度か、ノブに触って痛い思いをすることがありますね。」
「僕はあまりないなあ。」
「紙と同じと考えると、今の仕事は天職・・・?」
「え、じゃあ僕は・・・・・・」

※文中、敬称略