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【紙のソムリエ】番外編 シート先輩とコマキさんの紙に関する四方山話51 のし紙

「おはようございます、シート先輩。良かったらこれ、受け取って頂けませんか?」
「おはよう、コマキさん。何?カード?」
「はい、サンクスカードです。・・・今年からヴァレンタインの社内でのチョコが廃止になりましたよね?」
「ああ、食べ物を渡すって、最近、いろいろ難しいよね・・・」
「はい。でも、先輩にはいつもお世話になっていますし、何かしたいなと姉に相談したら、カードはどう?と言われて。サンクスカードも、苦手という方はいらっしゃいますし、迷ったのですが・・・」
「僕は大丈夫。ほめられるの大好きだし、嬉しいよ。・・・食べ物から紙へ、か。なんか、『のし』みたいだね。」
「『のし』?あの、贈答品につける、『のし紙』の『のし』ですか?」
「そう、その『のし』。あれ、元はアワビだったって知ってる?」

「『のしあわび』というと、結納の時に納める品のひとつですよね。確か、不老長寿の意味があるとか。」
「そう。同じような意味合いで、お祝い事の贈り物に赤白の紙で包んだ『のしあわび』を添える風習が元々はあったんだって。それが簡略化されて、あわびの代わりに黄色い紙を使うようになって、今では『のし』が最初から印刷された『のし紙』を使うようになった。」
「ああ、だから、『食べ物から紙へ』ということなのですね。」
「うん。ただ、印刷になっても、『お祝い事に縁起の良いものを添えて贈りたい』という思いは変わっていないから、今でも『のし』が印刷された『のし紙』が使われるのは使われるのはお祝い事だけ。面白いのは、『のし』がもともと『のしあわび』、つまり、生ものだから、贈り物が器とか布とか生ものじゃないときは『のし紙』を使うけど、贈り物自体が生ものや海産物の時は『のし紙』は使わない、っていうマナーがあることかな。」
「そういう時は、表書きはどうするのですか?」
「『のし』がなくて水引だけ印刷された『掛け紙』を使えば良いそうだよ。」

「『のし紙』の用紙は和紙なのですか?」
「もともとはね。『奉書紙』は知ってる?室町時代に幕府の公文書用紙として使われ出した、楮が原料の表裏のある和紙なんだけど、品質が良くて墨なじみが良いということで、贈り物の包み紙やのし紙にも使われていた。」
「元は手漉きですか?」
「今でも高級なものはね。でも、機械抄きの奉書紙もあるし、手に入れやすい『のし紙』のなかには、洋紙が使われているものもあるよ。」

「そう言えばコマキさん、『赤棒』って知ってる?」
「『赤棒』ですか?」
「のし紙には蝶結びや結び切りの水引が付き物だよね?でも、そこまで仰々しいお祝いでもない・・・っていう時に、朱の横線1本の、水引が簡略化されたのし紙を使うことがある。その朱線が『赤棒』。」
「ちょっとした記念品とか御礼の品とかを渡すような場合に使うのですね。」
「以前は僕も知らなくて。ロール先輩に『倉庫から赤棒ののし紙、持ってきて』って言われて、『倉庫におでんがあるんですか?』って言って、笑われたことがあって。」
「・・・それは姉が失礼しました。」
「いえいえ。それもちょっとした『食べ物から紙へ』だったなあと思って。」
「・・・・・・(上手いこと落とした僕!っていう顔されても・・・・・・)」

※文中、敬称略