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【紙のソムリエ】番外編 シート先輩とコマキさんの紙に関する四方山話47 パルプモールド
「お疲れ様です、シート先輩。お昼休憩のところ、すみません。できれば、りんごをもらって頂けませんか?」
「要る!欲しい!・・・でも、どうして?」
「もらいものなのですが、少しおすそ分けを、と思いまして。今、欲しい方に配っていたのです。」
「有難う!うれしい!・・・え、箱ごと持ってきたの?」
「この方が傷まなさそうだったので・・・」
「まあ、確かに、パルプモールドに載ってる方が安定もするだろうしね。」
「このパッケージ、『パルプモールド』って言うのですか?」
「コマキさんが指してる外箱は段ボール。パルプモールドはそのなかの、リンゴの受け皿になってる方。原料パルプを金型で成形してつくる紙パッケージのことだよ。」
「果物や卵のパッケージとして良く見ますね。」
「元が紙だから柔軟で緩衝性があるし、通気性や保水性にも優れているから、青果物にはぴったりだよね。」
「原料は木材パルプですか?」
「もともとは古紙が原料だよ。昔は、古紙パルプのなかでも、製紙用に使われないものを緩衝材用としてパルプモールドにリサイクルしていたって話。元が再生品で、パルプモールドとして使い終わった後もリサイクルできるから、さらに環境に優しい製品と言えるんじゃないかな。」
「りんごや卵にぴったり沿うような、柔らかな曲面はパルプモールドならではという感じですね。」
「パルプモールドはどろどろの紙料を金型に吸着してつくるから、曲面もつくれるんだよ。つくり方は2種類あって、金型に吸着して成形したパルプモールドを型からはずして乾かした後で、改めて金型でプレスして形を整えたり空押ししたりしてできるのが『ドライモールド』。卵のパッケージとかはこちらの作り方が主流なんだ。それに対して、乾燥用の型に入れた状態で乾かすのが『ウェットモールド』。表面の光沢感や平滑性が上がって、エンボスも際立つから、化粧品なんかの高級品のパッケージとしても提案されている。」
「思い出しました。モルディアさんの『シルキーモールド』のことですね。」
「『シルキーモールド』は製品名で、それを含む品種名が『パルプモールド』なんだよ。製品名でいうなら、ファインペーパーを原料にしている竹尾さんの『ファインモールド』も、製品に元の紙の色や風合いが反映されているってことで、評価が高いよね。」
「もともとのパルプモールドって、あくまでも緩衝材って感じだったけど、デザイン性や美粧性が高いものも出てきて、今後パッケージ素材としてもっと注目を浴びるんじゃないかって話もあるよ。」
「使い捨てプラスチックの使用量削減にも、もっと貢献できるようになるかもしれないということですね。」
「電気製品の緩衝材でも、パルプモールドに置き換わっているものもあるしね。」
「そうですね。・・・あ、では、りんごをどうぞ。お昼ご飯代わりにはなりませんが、デザートにでも・・・って、先輩のお昼ご飯、おせんべいですか?」
「あはは・・・今月ちょっと使いすぎちゃって。あ、だから、りんご、すごくうれしい!夕飯予定だったものに置き換えるよ!」
「・・・次のお給料日まで、あと2週間はありますよ・・・・・・」
※文中、敬称略