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新聞記事より、出版・印刷業界の動きに関するものをピックアップしました。 |
1.DIC、最終損益ゼロに 今期 25億円赤字予想から改善設 |
インキ最大手のDICは8日、2010年3月期の連結最終損益がゼロ(前期は26億円の黒字)になりそうだと発表した。25億円の赤字としていた従来予想から改善する。欧米子会社などのリストラ費用がかさむものの、中国を中心に家電向けの合成樹脂や工業用の粘着テープなど高付加価値品が拡大。国内のインキ事業も黒字になる。利益率が改善し、10期ぶりの最終赤字転落は回避できそうだ。
家電向け合成樹脂けん引
売上高は前期比20%減の7500億円と従来予想を据え置いたが、国内で生産する高付加価値品が業績をけん引する。家電やテレビに使う合成樹脂を手掛ける工業材料部門の営業利益は前期比2.5倍の129億円、携帯電話やパソコンに使われる粘着テープを扱う機能性材料部門は2.7倍の54億円を見込む。
「中国や東南アジアなどアジアでの需要がいっそう高まっている」(斎藤雅之執行役員)といい、営業利益は従来予想の21%減益から一転、3%増の260億円となる見通しだ。
主力のインキ事業の営業利益は、前期比36%減の147億円と落ち込む。ただ、連結売上高の4割を占める子会社の米サン・ケミカルは、リストラ効果で09年7〜12月期は約80億円の営業黒字に転換した。国内インキ事業も、再編やコスト削減効果で通期は37億円の黒字(前期は16億円の赤字)となる見通し。
コスト削減も寄与する。年間削減計画を196億円と従来より35億円引き上げる。投資抑制により減価償却費が前期比1割減の365億円になる見込み。労務費などの経費削減も徹底する。
同日発表した09年10〜12月期の連結最終損益は22億円の黒字(前年同期は8億8100万円の赤字)、売上高は前年同期比17%減の2001億円だった。 |
2.大日本印刷がTOB インテリジェントウェイブに |
大日本印刷はジャスダック上場のシステム開発、インテリジェントウェイブにTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。子会社化も視野に入れている。インテリジェントは金融機関向けのセキュリティーシステム開発に強みを持つ。
TOBの実施機関は2月12日から4月2日までで、1株当たりの買い取り価格は2万6100円。過去3カ月の終値平均に対し、78.1%のプレミアム(上乗せ額)を付けた。取得を目指す株数の上限、下限は設けない。全株主が応募した場合の買い取り総額は約70億円となる。インテリジェントの経営陣もTOBに賛同している。
大日本は2008年8月にもインテリジェントにTOBを実施したが、応募株式数が下限に達せず、TOBは成立しなかった。 |
共同印刷は12日、吸湿性を備えた高機能包装材を量産する新工場を茨城県守谷市に建設すると発表した。医薬品や食品のほか、水分を嫌うシリコン半導体などを包装するのに使う。投資額は20億円。2010年11月に完成し、11年下期から本格稼動させる予定。
新工場で量産するのはポリエチレンなどに吸湿性の高い物質を混ぜ込んだ独自開発の包装材。有機ガスを吸収する性質もあるため、内容物の劣化を抑えられるという。半導体向けではシリコンウエハーなどを搬送する際の包装需要を見込む。
09年から接着剤の包装向けに少量の生産を始めていたが、用途の拡大が見込めると判断した。同じ材料を使った関連製品も含め、2015年に年間100億円の売り上げを見込む。 |
凸版印刷は15日、グループ内に分散していたIT(情報技術)事業を4月1日付で統合すると発表した。システム技術者を集約し開発を効率化する。グループ企業が持つIT製品や情報サービスを組み合わせ、顧客に提案できる体制を整える。4月時点の社員数は300人、2010年度に売上高80億円を目指す。 |
共立印刷は2010年3月期末の短期借入金をゼロにする。09年12月末時点では5億円あるが、5年物の固定金利を中心に借り換える。フリーペーパーや雑誌の印刷需要が減り、09年4〜12月期の連結純利益は前年同期比44%減の1億8800万円だった。厳しい経営環境のなかで金利変動のリスクを軽減し、資金繰りの安定を狙う。 |
6.凸版印刷 20代ママ向け販促支援参入 ショーで商品紹介 |
凸版印刷は子供を持つ20歳代の母親にターゲットを絞ったマーケティング支援事業を始める。親子参加型のファッションショーを開催し、ショーの内容を収録した雑誌などを通じて企業の商品、サービスをアピールする。対象の商品を販売する通販サイトも開設し、2011年に20億円の売り上げを見込む。
女性向けイベント企画会社、ツインプラネット(東京・渋谷)と共同で展開。若年向けファッションを好む「ギャルママ」と呼ぶ若い母親に的を絞る。ファッションショーは5月に横浜市で開催。アパレルや食品メーカーなどに参加を呼びかけ、ショーの会場で商品を紹介する。ショーへの参加は有料で、料金は業種やアピールしたい商品の数などで異なる。 |
7.薬の効き目 事前予測 凸版とシカゴ大 検査コスト半減 |
凸版印刷は米シカゴ大学と共同で大腸がんの治療薬「セツキシマブ」が効くかどうか事前に予測する検査手法を開発した。がん細胞中に含まれる特定遺伝子の変異の有無を手掛かりに判別する。従来法に比べて検査コストが半分になるという。
セツキシマブはバイオ技術を駆使して開発された抗体医薬。高い治療効果が期待できる半面、治療費が1カ月約60万円(薬価ベース)かかる。患者ごとの有効性を事前に予測できれば、無駄な投与を回避でき、医療費の削減にもつながる。
凸版は蛍光物質と人工的に組み合わせたDNA断片を組み合わせた試薬を開発。患者から採取したがん細胞に含まれる遺伝子「K‐ras」の変異を見分ける。
この遺伝子は40%の割合で変異し、変異しているとセツキシマブは十分に効かない。大腸がんの患者65人から採取した細胞で試したところ、欧米で開発された従来法と同レベル以上の精度で変異を見分けることができたという。
セツキシマブの効果を事前予測する手法は、国内では一部のがん専門医療機関でしか実施されていない。 |
8.大日印、稼ぎ頭が交代 今期営業益 包装・フィルム、印刷上回る |
大日本印刷の収益構造の変革が進んでいる。2010年3月期は包装・フィルムなど生活・産業部門の営業利益が創業の印刷部門を上回り、トップに躍り出る見通しだ。インターネットの発達などで印刷市場が縮小する中、印刷技術を核に進めた多角化戦略が奏功している。
同社によると、稼ぎ頭の交代は「1876年の創業以来、おそらく初めてではないか」という。生活・産業部門の営業利益は前期比90%増の380億円程度と過去最高だった06年3月期(375億円)を上回りそう。けん引役は世界シェアの7割を握る液晶用の反射防止フィルム。同製品は09年4〜12月期に売上高が前年同期比26%増えた。
これに対して印刷(情報コミュニケーション)部門の営業利益は35%減の205億円程度になる見通し。顧客企業が広告宣伝費を圧縮し、チラシやパンフレットの需要が減少。書籍や雑誌も苦戦している。
3本柱の1つであるエレクトロニクス部門の営業利益は前期比3倍強の100億円弱になりそう。生活・産業とエレクトロニクスの両部門が引っ張り、連結営業利益は23%増の570億円と4期ぶりに増加に転じる見通しだ。
印刷からスタートした大日印は1950年代以降、包装材や建材を扱う生活・産業部門、半導体や液晶関連の部材を扱うエレクトロニクス部門へ事業領域を拡大してきた。連結売上高に占める印刷部門は02年3月期に50%だったが、08年3月期には42%に低下した。
最近は丸善やジュンク堂書店といった書店の買収を進めるなど、印刷部門のてこ入れに動いている。再び印刷部門の売上比率が上昇しているが、利益面では悪化に歯止めがかからない状況だ。
金融危機後の景気低迷を受け、上場企業の間で収益構造を改革する動きが加速している。セブン&アイ・ホールディングスは09年3〜11月期に金融関連の利益がスーパー事業の利益を上回った。こうした事業の新陳代謝が産業界で今後も続きそうだ。 |
東芝子会社の半導体関連装置会社でジャスダック上場のニューフレアテクノロジーは25日、主要顧客の大日本印刷と凸版印刷の2社を引受先に第三者割当増資を実施すると発表した。3月26日に新株を発行して約19億円を調達する。半導体技術の高度化で膨らむ研究開発費用に充てる。 |
10.中部企業これで克つ エムアイシーグループ 環境に優しい印刷技術 |
2008年にインクに有機溶剤を使わない紫外線(UV)印刷を導入した。揮発性有機化合物(VOC)を巡る規制が4月から強化されることを背景に、VOCが発生しない印刷技術を確立。森林認証も取得するなど、環境保全に対応した技術力が強みだ。
UV印刷の特徴は環境負荷が低いことに加え、紫外線を照射すると瞬時にインキが固まる点にある。有機溶剤を多く含み乾燥しやすいといわれる油性インキでも、乾燥に1日程度かかる。UV印刷では表面の印刷後すぐに裏面に印刷したり、裁断・製本といった工程に移ったりでき、納期の短縮につながる。
経営陣と技術陣が検証を繰り返し、表面をなめらかに仕上げたりざらざらとした感触に加工したりする技法を編み出した。通常のUV印刷と異なり、水や光、布といった幅広い素材の質感を反映できる。こうした技術力を持つ印刷会社は中部でも数少ないとされ、08年度には愛知県から独自技術を評価する「愛知ブランド企業」に認定された。
1905年に創業。チラシなど商業印刷を中心に手掛けてきた。ただ同業者との価格競争の激しさを背景に、差異化の柱として環境対応に注目して導入を進めてきた。
生態系の保全につながるとされる森林認証も07年に取得した。今年は生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の開催を控え関心も高まっており、三浦康彦社長は「顧客への信頼度が向上し受注機会の拡大につながった」と話す。
環境保護への意識の高まりを背景に、大手企業からの印刷物の注文は森林認証が指定されることもあり、不況下でも顧客の確保につながるという。三浦社長は「生物多様性の保全は森林資源の有効活用につながる」と強調する。
同業者との差別化で力を入れるもう一つの点がデジタル化対応だ。印刷物はすべてパソコンで作りデジタルデータの形で保存。チラシやパンフレットをホームページに転載したいという要望にも機動的に対応できる。 |
1.小学館など出版大手 「返本不可」仕組み導入 収益の改善目指す |
小学館や角川書店など出版大手が、書籍流通に新手法を相次いで導入する。書店で売れ残った本の返品を原則受け付けない代わりに、書店の利幅を増やすのが特徴。書籍市場が縮小する中、業界全体で40%強に達している返品率が出版社の経営を圧迫している。新手法で返品を減らし収益改善につなげたい考えだ。
小学館は「計画販売制」と呼ぶ手法を、3月16日刊行の「せいかつの図鑑」から順次導入する。書店は本を仕入れる際に、計画販売制と従来の返品自由な「委託販売制」のいずれかを選べる。
計画販売制は書店で売れ残りが発生しても返品は受け付けない。現金化の要請があれば、定価の30%で買い取る。書店は在庫になるリスクを抱えるが、仕入れ値は定価の約78%から65%に下がる。売れた場合は従来より、書店側の利幅が大きくなる仕組み。
従来の制度は書店が本を自由に返品できるため、実際に売れる量より多めに発注しがちだった。小学館は新制度で無駄な本の出版部数を減らすとともに、書店の取り分を増やして販売意欲を高める。
角川グループパブリッシングは3月3日、人気作家ブラウン氏の「ロスト・シンボル」の初回配本分で、返品不可の「責任出荷制」を導入する。書店の利益率は従来の委託制と同じだが、書店は人気作品を欲しい数だけ確実に仕入れることができ、販売後には1冊50円の協力金を受け取れる。
本をどの書店にどれだけ供給するかは、書店の販売実績に応じて決めているのが現状。人気作品は、書店によって希望通りの部数を仕入れられないことも多い。責任出荷制を使えば地方の中小書店などでも品ぞろえを強化でき、出版社側の返品リスクも減らせる。
講談社も昨年10月に「CDえほん まんが日本昔ばなし」で返品不可の「責任販売制」を導入した。
2009年の書籍の販売金額は8492億円と、ピークの1996年から2割強減少。返品率は前年より0.5ポイント悪化し40.6%になった |
2.三洋堂書店 店舗運営を効率化 作業標準化・システム刷新 販管費を抑制 |
三洋堂書店は2011年3月期に店舗運営を効率化する。店内作業の標準化や情報システムの刷新などで、従来より少ない人員でも円滑に店舗の運営や商品の受発注ができる体制を整える。販管費を抑制し、経営基盤を強化する。
三洋堂書店は愛知・岐阜・三重3県を中心に計90店舗を展開している。10年3月期の単独業績は売上高が前期比2%減の279億円、税引き利益は11%減の1億5000万円を見込む。
店舗運営は従来、店長の裁量余地が比較的大きかった。今後は店舗の規模や売上高に応じて3〜4タイプの運営指針を作成する。陳列や検品など基本的な作業について、各店舗での所要時間を計測。問題があれば仕事の仕方を見直し、店舗間の業務効率のバラツキをなくす。
また、業務量に応じた合理的な人員配置を実施。中期的には従業員に占める正社員の比率を20%から10%台に下げる。
作業標準化は現在、90店のうち20店強で試行している。11年3月期にはすべての店舗で本格展開する計画。将来的に効率の高い運営手法を確立できれば「同業他社も導入可能なようにパッケージ化する」(加藤和裕社長)方針だ。
情報システムの刷新は10年5月をメドに完了する予定。投資額は11年3月期までの4年間で約10億円に上る。パートなど店員のシフト管理は主に手書きで実施しているが、新システムでは各人の携帯電話からネット経由で簡単にシフトを組むことが可能になる。シフト管理に関する事務処理の負担を軽減することで、店舗管理職が営業に専念できるようにする。 |
3.講談社・小学館など 女性誌のサイズ統一 出版不況に対応 印刷コスト圧縮 |
講談社や小学館など大手出版社が女性誌のサイズを統一する。現在は編集部のこだわりなどから寸法が1〜2ミリずつ異なっている。雑誌全体の販売金額が2009年にピーク時の7割弱の水準まで落ち込むなか、女性誌の売れ行きも低迷。サイズ統一で紙の調達や印刷、輸送といった各段階でコストを圧縮する。
サイズ統一の対象は講談社が「ViVi」など5誌、光文社が「JJ」など7誌、小学館が「CanCam」など9誌、主婦の友社が「Ray」など9誌。大手出版社が雑誌の寸法を共通化するのは初めて。
縦297ミリ、横232ミリにサイズを統一する。集英社のサイズが基準になった。主婦の友社は4月刊行分から、他の出版社は2月後半に刊行する4月号から順次、統一サイズに改める。
サイズ統一により、紙の購入や印刷、輸送、在庫管理などを合理化できる。またサイズを統一すると雑誌に掲載する広告の寸法も各社共通になる。広告主が雑誌ごとに広告の原稿を作り直す手間が省け、広告を出しやすくする。
雑誌は創刊の度に紙を特注し、サイズや厚み、紙質を競合誌と微妙に変えて読者に個性を訴えてきた。今後は「寸法でなくコンテンツで競う」(小学館)ことになる。
出版科学研究所によると、09年の雑誌の販売金額は1兆864億円で、ピークの97年から31%減少した。部数の落込みはさらに深刻で、95年のピーク時と比べ4割強減った。販売不振から09年には「マリ・クレール」など有力誌の休刊が相次いだ。
出版不況を乗り切るため、各社は雑誌の有料配信実験を共同で運用するなど、デジタル化でも連携を強めている。紙の媒体でも共同で経費削減や製本の効率化を図る動きが進み始めた。
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4.ヨーカ堂と世界文化社「読ませるチラシ」で販促 料理本の献立掲載 食材売り込む |
セブン&アイ・ホールディングス傘下のイトーヨーカ堂と出版社の世界文化社(東京・千代田)はチラシを使った共同販促に乗り出す。料理本のレシピや写真を掲載した「読ませるチラシ」をつくり、関連の食材などを店舗の専用コーナーに集めて販売する。献立のヒントを提供して消費者の訴求力を高める狙いで、20日から全国の153店舗で実施する。
缶詰に一手間加えて作るつまみの情報を集めた料理本「缶つま」とチラシを連動させる。チラシに「お酒がすすむ缶つま」と題した特集記事を載せ、同書からレシピを転載して関連の商品を紹介する。第1弾のチラシは28日までを期限とし、その後の展開は効果などを検証して決める。
「缶つま」は2009年7月の刊行で、不況による内食志向を背景に計3万8000部を販売。セブン&アイは人気書籍との連動で、価格の安さ以外の付加価値を消費者にアピールしたい考えだ。同社が出版社と連携して書籍のコンテンツを二次利用したチラシを作るのは初めて。
世界文化社は全国に店舗を持つ流通大手との連携で、本の新たな販路を開拓する狙い。
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5.講談社の前期最終赤字57億円 雑誌広告収入26%減 |
講談社が23日発表した2009年11月期の決算は最終損益が57億円の赤字(前の期は76億円の赤字)だった。雑誌の広告収入が26%減少したのが響いた。売上高は前の期比7.8%減の1245億円で、書籍が5.9%減、コミックを除く雑誌は9.6%減だった。
売上高は1995年の2033億円をピークに減少が続いている。営業赤字は73億円、経常赤字は49億円だった。賞与や会合費のカットなどで「十数億円の経費削減」(同社)を実施した。全雑誌を見直しの対象とするほか、電子書籍や海外市場への対応を進めて事業の多角化を図る。
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6.主要企業の7割 広告宣伝見直し 日経広告研まとめ |
日経広告研究所がまとめた主要広告主調査によると、69.5%の企業が、2008〜09年度に広告宣伝部門の大きな見直しを実施したと答えた。見直した内容は「出稿メディア」が一番多く、「見直し」企業の61.0%を占め、「広告宣伝予算の決め方を変更」(36.3%)「広告効果測定方法を再考」(21.4%)などが続いた。
回答企業の09年度の広告宣伝費実績見込みは前年度比11.3%減と2ケタの減少。配分をメディア別にみると、テレビが前年度比0.7ポイント減の46.8%、新聞が2.4ポイント減の8.2%と従来主力だったマスコミ媒体が比率を下げた。インターネットは0.5ポイント増の5.4%を確保した。
調査は09年11〜12月に広告費上位企業など464社を対象に実施、262社から回答を得た。
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電通が5日発表した1月の単体売上高によると、インターネット関連の広告は前年同月比80.2%増と大幅なプラスを記録した。09年7月以来、7カ月連続の増加で、ほかの媒体に先行する形で回復基調が定着してきた。09年11月以降の直近3カ月は、前年同月比の伸び率が40%以上を記録。広告主が宣伝予算を一段とネットにシフトさせている。 |
2.修正和解案に米司法省「懸念」 グーグル書籍検索 |
米司法省は4日、インターネットで絶版本を検索・閲覧できる書籍検索のサービスを巡る訴訟でグーグルと米出版界が合意した修正和解案について「著作権と市場独占の懸念が残る」などとして引き続き問題視する意見書をまとめ、和解案を審議する米連邦地方裁判所に提出した。グーグルなどは昨年11月に書籍の対象を絞るなどの大幅な修正を加えた和解案をまとめていた。
司法省は修正和解案について、「重要な進展が反映された」と一定の評価を示す一方で、「従来と同じ問題がある」とした。
ニューヨークの連邦地裁は2月18日に公聴会を開いて修正和解案を認めるかどうかを審理する予定だ。司法省の意見が、裁判所の判断に影響を与える可能性もある。
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3.公文書電子化11年度から 政府方針 国立公文書館 検索・収集しやすく |
政府は2011年度から、国の行政機関が新たに出す法令や通達など公文書の保存方法を電子化する。現在、公文書の原本は紙媒体だが、行政機関でのIT(情報技術)普及に合わせ、電子媒体を国立公文書館に保存する方式に移行する。利用者にとっては資料の検索や収集が容易になる。電子化が順調に進めば、インターネットを通じて時間や場所の制限なく公文書を閲覧できるようになる。
国立公文書館の10年度から5年間の中期目標案に電子化を進める方針を盛り込んだ。保存方法はCDやDVD、中央省庁のコンピューターネットワーク「霞が関WAN」などを使う予定だ。
国立公文書館は08年度の場合、ファイルにして約4万冊の公文書を新たに保存した。今後、保存する資料すべてを電子媒体に切り替えるのは難しいものの、順次、移行を進める。現存する紙の資料も、コストなどを考慮しつつデジタル化する。
年金記録の管理不備や、公文書の散逸などの問題をきっかけに09年に成立した公文書管理法は11年に施行される予定だ。同法は公文書の管理・保存の厳格化を強調しており、電子化による膨大な資料の集中管理が容易になる。
同法では公文書の管理方法について、省庁ごとに違うルールを統一。歴史資料として重要な公文書は原則として国立公文書館に移管する。公文書の廃棄には首相の同意が必要だ。
中期目標案では、歴史資料の中で外交関係など非公開情報が含まれる「要審査文書」については、公開の可否を判断する審査機関の迅速化も進める。一定期間が経過した非公開情報はできるかぎり開示することも強調している。
地方自治体など関係機関との連携強化も明記。国立公文書館だけでなく各地の公文書館の所蔵情報もネットで簡単に利用できる体制を目指す。アジアを中心とした海外の資料所蔵機関との協力も進める。
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4.広告費、ネットが新聞抜く テレビに次ぐ2位 総額11%減、5.9兆円 09年、電通調べ |
電通が22日発表した2009年の日本の広告費総額は、5兆9222億円と前年比11.5%のマイナスとなった。テレビや新聞、雑誌、ラジオの4媒体がいずれも10%を超える減少率だったのに対し、インターネット広告は同1.2%増の7069億円だった。ネットが新聞を逆転し、首位のテレビに次ぐ額を確保した。
広告費の総額は07年の7兆191億円をピークに2年連続で減少した。08年は秋のリーマン・ショックを境に企業が広告宣伝費を削減したことが響き、前年比4.7%減った。09年はマイナス幅がさらに拡大した。
媒体別ではテレビが10.2%減の1兆7139億円、新聞が18.6%減の6739億円、雑誌が25.6%減の3034億円、ラジオが11.6%減の1370億円だった。ネットも伸び率は前年より縮小したが、携帯電話向けのモバイル広告や、パソコンで検索した際に検索結果に応じて表示される広告が好調だった。
主な業種別にテレビ、新聞、雑誌、ラジオの4媒体向けの広告費をみると、民間は軒並み広告費を抑制した。全体の約1割を占める食品は2885億円と前年比4.3%減った。化粧品関連も6.1%減少し、自動車、家電関係の減少幅はそれぞれ30%、13.8%だった。前年を上回ったのは官公庁・団体だけで、総選挙などに関連する広告が増えたという。
電通は07年に集計方法を見直したため、過去の数字と単純に比較できないが、総広告費が6兆円を割り込んだのは04年以来となる。見直しの影響が比較的少ないテレビでみると、09年実績は1995年の1兆7553億円とほぼ同水準にとどまった。
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5.世界16億人ネットパワー 消費者争奪 規模で圧倒 新たな寡占に警戒も |
2009年12月25日は米アマゾン・ドット・コムにとって記念すべき日となった。電子書籍端末「キンドル」向け電子本の販売部数が初めて「紙の本」を上回ったのだ。
進む主役交代
紙の本から電子本へ、書籍販売から総合ネット小売り大手へ――。同社の成長はネットがもたらしたビジネスの主役交代を象徴する。
(略)
電子書籍にはアップルも「iPad」で参入を決定。アマゾンが自費出版の著作権者側の取り分を70%に倍増させるなど、コンテンツ獲得競争が激しくなってきた。
紙媒体が中心の伝統的な出版業界も対応に動かざるをえない。講談社が23日に発表した09年11月期決算は2期連続の最終赤字、減収は14期連続だ。会見した金丸徳雄取締役は「電子書籍にも対応し新たな出版社像を目指す」と語った。
だが出版社にとって電子書籍はもろ刃の剣。新たな収益源に育つか、紙の書籍の市場を奪うか。アマゾンなど電子書籍勢が価格決定権を握れば、電子本が大幅に値下がりし出版業界は総崩れしかねない。決定権を守るため、国内の大手21社は2月「日本電子書籍出版協会」を立ち上げた。
(略)
早さと安さで市場の寡占を狙うネット勢。だが、電子出版分野では、米グーグルによる絶版本の電子化・閲覧サービスなどで著作権の取り扱いを巡る議論が未決着だ。
楽天の動きには金融庁が神経をとがらせる。現在、ポイントは買い物などでたまる“おまけ”として規制対象外。だが、1ポイント=1円で使える楽天ポイントとエディが連携すれば、ポイントは“疑似通貨”の性格を帯びる。
新しい力が急成長する一方で、管理する仕組みの整備は追いついていない。危うげな膨張に警戒感も強まっている。
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6.発売前の書籍全文 ネットで無料公開 角川、読者層拡大へ「実験」 |
角川グループホールディングスは1日、発売前の書籍の全文を実験的にインターネットで無料公開する。発売まで10日間の期間限定で、読者層を広げ、本の購入者を増やす狙いがある。大手出版社による書籍の無料公開は珍しい。
角川歴彦会長兼最高経営責任者(CEO)の著書「クラウド時代と<クール革命>」(角川書店)をホームページで1日午前11時から全ページ公開する。閲覧だけでデータの保存はできない。10日に発売する新書判は740円。
同書はIT(情報技術)が促すメディア産業の構造改革やコンテンツビジネスの未来を考察している。
出版業界では米グーグルやアップルの電子書籍事業参入で「紙の本の売れ行きに影響が出る」との危機感がある。
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