数えるだけで人が育つというのは大きな間違いだ。
手取り足取り数えたりしない。自分で工夫させ、考えさせ、努力させる。数える方も教えられる方も我慢比べ。お互い、耐える力がないと技は継承できない。ある時期が来たら助言するだけで、その子はぎゅっと伸びる。耐えてきた”無駄”があるからだ。
企業の人にどうしたら若い人にもの作りを教えられるかと問われたから「教えちゃいけない」と答えた。
「禅問答を聞いているみたいだ」というのが相手の反応だ。無理もない。企業がうちみたいな育て方をしたら、倒産してしまうかもしれない。十年も待っていられないだろう。だが、今までが急すぎたんじゃないか。ゆっくり、少しずつ進めばいい。
苦しんで苦しみ抜く時代がないと職人は育たない。
執念のもの作りとは、できあがったものに不満を持つことだ。その悔しさがあるから、また努力する。少しずつ技を磨きながら進むことは企業が力をつけるうえでも必要だと思う。 |