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【紙のソムリエ】新入社員シートくんとロール先輩の紙修行 ⑪ リアルを守るボール紙 ~白ボール・黄・チップ~

「ただ今帰りました!」
 夕刻、事務所にシートくんの元気いっぱいな声が響きます。
「お帰り。元気だね、シートくん。何か良い事あった?」
「はい!展示会に行かせて頂いたんですけど、すっごくすっごく勉強になりました!」
言われてロール先輩、思い当たります。
「そうか、今日って展示会の日だったっけ。面白かった?」
「はい。やっぱりこれからはARですよね!・・・あ、先輩、これ、お土産です。」
「有難う。・・・でも、最新鋭の展示を見てきたのに、お土産がおまんじゅうってところがシートくんらしいよね・・・」
 シートくんに聞こえないように呟きながらロール先輩、お土産を受け取り、早速みんなに配り始めます。空になった箱をつぶして捨てようとしたところで視線を感じ、振り返ると、シートくん、箱をじっと見つめ、小首を傾げます。

「片面が白で片面が貼り合わせ・・・和紙の下はねずみ色・・・先輩、その箱って、高板でも特板でもありませんよね?」
「御名答。何だと思う?」
「・・・コートボール?」
「御名答、と言いたいけど、この厚さといい、貼り合わせといい、多分これは、原紙、裏白チップだと思うよ。まあ、箱って、今は貼箱より印刷箱の方が主流だし、コートボールが原紙って場合の方が多いんだけどね。」
「コートボールと裏白チップ・・・その二つって何が違うんですか?」
「うーん・・・端的に言うと、グレードと厚さ、かな」

紙器用板紙 白板紙 マニラボール 高板・特板・一般マニラが属する
白ボール 塗工・非塗工が有り。塗工品が「コートボール」。
黄板紙(黄ボール) 黄土色の見かけが特徴
チップボール 裏面を白色加工したものが「裏白チップ
色板紙 クラフトボール
茶ボール
ねずみボール
その他の色ボール

「紙器用板紙のグレードがこんな感じ。黄板・チップ・色板は同グレード扱いだけど、それ以外は簡単に言うと、上に行くほどグレードが高い。」「白ボール白板紙の一種なんですね。」「そう。原料を見てみると・・・」

表層 中層 裏層
白ボール 晒化学パルプ 機械パルプ、脱墨パルプ、各種古紙
黄板紙 稲わらパルプ、古紙
チップボール 古紙

白ボールは原料も良いもの使ってるし、大半がコート品だから印刷再現性も高いの。で、高板や特板に比べて値段も安いから、普通に見かけるお菓子やお酒、食品、服とか洗剤、文具、靴、おもちゃ、ティッシュボックスなんかの日用雑貨のパッケージは、原紙の多くがコート白ボール、略してコートボールってわけ。コートボールって紙器用板紙の生産量の約半分を占めてるくらい、使用割合が高いんだよ。」
「そうか・・・黄板紙の箱って、あんまり見ないですもんね。」
「元々一番最初に出来たのは黄板紙なんだって。黄土色の黄板紙に上質とか和紙とかを貼り合わせて箱なんかの用途で使ってた。それが、原料のわらが手に入りにくくなってきたんで、代わりに使われるようになったのがチップボール。これも用途は一緒で、貼箱に使ってたんだけど、より印刷や製函に適したコートボールが作られるようになって、貼箱より印刷箱の方がコストが安いのもあって、今ではパッケージの主流はコートボールになってしまった、ってことらしいよ。」
「チップボールや黄板紙は、今はどんな使われ方をしているんですか?」
下級の箱の芯とか、本の表紙の芯とか、いわゆる『芯材』って呼ばれる使われ方が大半かな。」

「でも先輩、僕のお土産の箱は裏白チップだって・・・」
「それがね、和菓子の箱、特に贈答用の箱に関しては、今でも裏白チップを使うことが多いんだよね。チップボールは白ボールより、号数で言うと2号くらい厚いっていう特徴があるから、それに和紙を貼り合せて高級感を出すには向いてるってことなんだろうね。」
「先輩、今知らない言葉が出てきたんですけど・・・号数って何ですか?」
「ああ、ごめんごめん。号数っていうのは、板紙の中でも特に厚いもの、コートボールとかチップボールとかの米坪数を表す単位のこと。50g/㎡=#1(いちごう)、5g/㎡単位で枝番がつくから、例えば」

米坪 g/㎡ 350g 600g 270g 310g
号数 #7(ななごう) #12(じゅうにごう) #5-4(ごごうのよん) #6-2(ろくごうのに)

「・・・ていう呼び方をすることがあるの。」
「なるほど。号数で言う方がなんかプロっぽいですよね。これから使います!」
「・・・呼び方って言えば、黄板紙って、その見かけのせいで昔は、◯◯◯紙って呼ばれてたんだって。」
「・・・その呼び方は使いたくないです・・・・・・」

「あと、これは取引上の習慣なんだけど、洋紙はミリメートルで寸法を表すでしょ?板紙はセンチメートルで寸法を表すのが普通なの。」
「板紙独特の寸法っていうと、L判とかK判とかですよね?」
「そう。L判は80センチX110センチでしょ?洋紙の感覚でつい800㎜X1100㎜って言いそうになるけど、板紙だと80cmX110cmって表現するのが普通なんだよね。」
関東K判関西K判、っていうのもありますよね。」
「関東K判と関西K判では同じ米坪でも連量が変わることもあるから、要注意だね。」

名称 寸法(単位:cm)
L判 80X110
関東K判 64X94
関西K判 65X95
S判 82X73
S判も、板紙特有の寸法ですよね」
「他にもワイシャツ判とかワイン判とか色々あるけどね。特にコートボールって、用途が幅広いから寸法も本当に色々あるんだよね。」

「そう言えば、K判は菊判から来てるんですよね?L判とかS判とかはどこから来てるんですか?」
「えー、そこまで対比出来たんなら自分で考えようよ。簡単でしょ?」
「けち・・・」
「何か言った?」

「コートボールの銘柄ってどんなものがあるんですか?」「いろいろあるよ。えっと・・・」

メーカー コートボール ノーコートボール 黄ボール・チップボール
王子 UFコート
OKボール
サンコート
サンダイヤN
コラボファインG
コラボファインW
コラボファインV
チップボールA
日光ホワイトA
日本 JET STAR NSボール
N白Sボール
北越 マリコート
加賀 黄ボールN
チップボールN
兼六ボールN
クリーンボールN
両面兼六N
京王 A白ボールDX
ニュー裏白
レンゴー CRC ニューダイヤフォレスト
シラギクZERO

(※2019年紙業手帳より数点を抜粋)

「本当にいろいろ・・・」
「もっと他にも紹介したいメーカーさんがあるんだけどね。」
「コートボールだけじゃなくて、ノーコートボールも結構種類多いですね。」
「無地の箱でノーコートを使うことも多いよ。白無地箱って、意外に使用量や用途、多いんだよね。無地なら印刷適性関係ないからノーコートで十分ってことみたい。でも、コートボールの方でも、最近は輸入紙の比率が上がって来たって聞いたなあ。」

「で、展示会はどうだった?ARの紹介が中心だったの?」
「あ、そうです!これからの広告の在り方について考えさせられました・・・て、僕が言ったら生意気なんですけど。」
「いやいや、新技術に関心があるのは頼もしいと思うよ。・・・でもね。」
ロール先輩、捨てようとしていた菓子箱を愛しそうに撫でています。
「これからの時代、ARみたいな手法って避けて通れないけど・・・でも、食品にしても日用品にしても、これからだって必要な『リアル』でしょ?それを守って、流通させてくれるのは、こういう低グレードって言われてる板紙なんだよね。」
何だかしんみりした口調のロール先輩に、浮かれていた自分がちょっと恥ずかしくなったシートくんなのでした。

(初掲載:2013年2月10日、この当時はARが新技術として展示会などで紹介されていました。加筆修正:2019年11月14日)

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