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【紙のソムリエ】新入社員シートくんとロール先輩の紙修行 ⑫ 小さな違いが大きな違い?~封筒~

「うわ、何だこれ!?」
 営業から帰ってきて、いきなりすっとんきょうな叫び声を上げたシートくん。事務所中の注目を浴びていますが、全く気付かず、机の上を凝視しています。
「どうしたの、シートくん?」
 恐る恐るロール先輩が声を掛けると、
「・・・ロール先輩・・・」
 ちょっと涙目で振り返ったシートくんの手には、可愛い文字でぎっしり書かれたメモが握られています。
「・・・ええっと・・・・・・」
メモに目を通すロール先輩、
「要するに、総務のパレットちゃんからの抗議のメモってことだね。『会社の文書を出す時には、必ず総務に言って社用の封筒を使って下さい。』・・・別に、普通のことじゃない。シートくん、社用封筒を使ってなかったの?」
「すみません・・・見積書とかを郵送したいな、って思うの、大抵、帰社後なんです。でも、最近帰社が遅かったから、パレット先輩、もう帰宅された後で・・・ついつい手持ちの封筒に入れてて・・・」
「で、手持ちの封筒を総務の郵便受付箱に入れて、パレットちゃんに発見される、と。・・・シートくん、一体どんな封筒使ってたの?」

「これですけど・・・」
 シートくんが出してきたのは、何の変哲もない長形のクラフト封筒。でも、見ただけでロール先輩、「あ、これはダメだね。パレットちゃん、怒る筈だよ。」と断じます。
「え?どうしてですか?確かに家に昔からあった、余ってた封筒ですけど、別に何も印刷されていない、無地のクラフト封筒だし、ビジネス使用でも問題ないと思ったんですけど・・・」
「まず、会社の文書を郵送するのに、社名の入ってない封筒を使うのはどうか、っていう根本的な問題は置いておくとしても・・・この封筒、長2だよ、シートくん。」
「え?長3だと思ってたんですけど・・・」
 慌てて大きさを測るシートくん。
「確かに、縦に長い・・・気づきませんでした。・・・でも、先輩、違いなんて、4センチくらいなんですけど・・・・・・」
「あれ?知らなかったの、シートくん?長3は定形内だけど、長2は定形外だよ。」
「え?」

「まずシートくん、封筒の形に3つのタイプがあるのは知ってる?」「長形、角形、洋形、ですよね。」

長形 巾:長さの比が1:2くらいの、縦に長い封筒。『定形内』郵便を発送されるのに使われることが多い。
角形 長形よりも横巾の比が大きい封筒。
洋形 長形とは逆の、長さより巾の方が大きい封筒。招待状などの発送に使われることが多い。

「その通り。じゃあ、貼り方は?」「大きく分けると4タイプです。えっと・・・」

横貼 のりしろが封筒の長さの端に来る貼り方。サイド貼り、サイドシームとも言う。
のりしろが右に来るか左に来るかで、『右横貼』『左横貼』という言い方も。
中貼 のりしろが裏面の真ん中に来る貼り方。センター貼り、センターシームとも言う。
内カマス 洋形の封筒で、裏面両サイドののりしろが内側に入る形の貼り方。
外カマス 洋形の封筒で、裏面両サイドののりしろが外側に出る形の貼り方。

「そう、大まかにはこの4通りだよね。で、これに、サイズとかが加わって、封筒の種類が決まってくるの。」
「先輩、封筒の注文をお受けする時に、必ず確認しなきゃいけない項目って、どんなのがあるんですか?」
「そうだね・・・」

長形、角形、洋形 等
サイズ 「これは後で詳しく説明するね」
貼り方 横貼、中貼 等
紙質・厚さ クラフト、白、色物等原紙の種類と、70g、80g等の厚さ。色物なら色指定も必要。フィルム封筒や、ファンシーペーパーを使ったものなど、種類は様々。
口糊 フラップ(ふた)を止めるのに使う糊の種類。アラビア、アドヘア、テープタック、ファインタックなど。呼称はメーカーによって違う場合も。
宛先住所などの表示のための窓の種類。窓あき、セロ窓、プラ窓等。最近は生分解フィルム使用の場合も。
印刷 表・裏・内の各所に印刷が入るかどうか。入る場合は、色数や色の種類(特色を使うかどうか)、印刷内容、印刷範囲、データ支給かフィルム支給か、等を確認する必要あり。

「大体こんなところかな。」
「表、裏はともかく、内側に印刷が入るかどうかって、封筒ならではって感じがします。」
「最初から『内地紋』って、内側に透かし防止の印刷が入っている既製品封筒もあるから、覚えておいてね。印刷内容や加工内容によって、既製品に刷り込みで対処できる場合と、一から製袋とかまで別注になっちゃう場合があるけど、それによって随分価格が変わってくるから要注意だね。」

「各メーカーの製品も、随分変わったものがあるんですね。」
「イムラ封筒さんだと、クイックオープナーとかはその走りだよね。ユーザーのお客様にダイレクトメールやアンケートの郵送なんかの提案をする時、いかに開封率を上げていくか、そして、いかにたくさん返答が返ってくるか、が鍵になるでしょ?お客様の要望を受けて、封筒メーカーさんでも色々な提案事例を持っているから、迷ったら一度相談してみるのも手だと思うよ。」

「で、サイズの話に戻ると、長形、角形、洋形でそれぞれ基準の寸法が決まってて、長形、角形だと、大きい方から順に、長形1号、長形2号、長形3号・・・っていう呼び方をしているってことなんだけど。」
「長形3号を短縮形で長3(ながさん)、って呼んでるんですよね。」
「その通り。大体の寸法は頭に入ってる?」
「う~ん、それはあんまり自信無いです。」
「よく出てくる大きさだと・・・」

長形封筒 角形封筒 洋形封筒
長3 120㎜X235㎜ 角0 287㎜X382㎜ 洋2 114㎜X162㎜
長40 90㎜X225㎜ 角1 270㎜X382㎜ 洋4 105㎜X235㎜
長4 90㎜X205㎜ 角2 240㎜X332㎜
角A4 228㎜X312㎜
角3 216㎜X277㎜

「封筒の寸法って、フラップ(ふた)の長さは含まないから、それは別に考えてね。」
「単純に1、2、3じゃなくて、途中で40とかA4とか入ってくるのは何故なんですか?」
「ああ、それは昔と今の、事務文書の大きさの違いのせいで・・・・・・で、問題のシートくんの封筒は長形2号、119㎜X277㎜。」
「長3に比べると、巾はほとんど一緒、長さが4センチくらい長いってことですね。」

「これに、郵送の場合の『定形内』『定形外』って規定が絡んでくるわけ。今回関係してくるところだけ言うと、『定形内』の大きさは90㎜X140㎜から120㎜X235㎜まで。」
「そうか・・・長3は定形内最大の大きさなんですね。で、長2はそれをはみ出しちゃうから、定形外。」
「そういうこと。で、パレットちゃんが総務として許せないのは、多分ここから。同じ見積書1枚送るのに、長3なら80円切手で済むのに、長2だと120円掛かっちゃうんだよね。」
「あ~・・・」
「40円くらいって思う?」
「思いません!1円違いで仕事が取れるか取れないかってことありますもん。コストダウンがどれだけ大事か、身に染みてます・・・いや、そのつもりだったんですけど・・・・・・・」
「まあ、まだまだ身に染みてなかったってことだね。」
「・・・・・・」
(注:郵便料金は2013年3月当時の料金。2019年11月現在、定形、25g以内の郵便料金は84円となっています。)

「怒ってますよね・・・・」
「怒ってるよねえ、このメモの感じじゃあ。パレットちゃん、そんなに怒る子じゃないのに。何回か注意されてたんじゃないの?」
「されてました。・・・でも、パレット先輩、優しいから、注意されてる感じがしなくて・・・」
「その都度、聞き流してて、結局本気で怒らせちゃいました、と。」
 さて、と自分の机に戻り、帰り支度を始めるロール先輩。慌てて、シートくん、呼び止めます。
「ちょっと待って下さい、先輩。僕、どうすれば良いんですか?」
「知らないよ、そんなの。何かと思えば、完全にシートくんの自業自得じゃない。まあ、でも・・・」
 にやりと笑うと、ロール先輩、封筒の見本帳の中から、ある貼り方の封筒を取出し、シートくんに差し出します。
「こんなものでもプレゼントすれば、機嫌直してくれるんじゃないの?」
「え、これって・・・て、無理に決まってるじゃないですか、僕の分際で!第一、本当にこんなもの買えたとしても、逆に引かれるの、目に見えてるじゃないですかあ!!」
 シートくんの叫びを笑いながら聞き流して、ロール先輩、お先に、と手を振ります。残されたシートくんは、メモと封筒見本を見比べながら、がっくり肩を落としたのでした。

(初掲載:2013年3月10日、加筆修正:2019年11月15日)

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