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【紙のソムリエ】シートくんとロール先輩の紙修行 88 代替品を探すときは②

 日に日に最高気温が上がっていく季節のある日。コマキさんがシートくんに『次の機会』の話を催促しています。
「えっと、前回は何の話をしていたんだっけ?」
「欲しい銘柄・寸法・連量の紙の在庫がなくて、代替商品を探すときの注意事項を教えて頂きました。同連量で別寸法のものや、同寸法で近い連量のものを探すときに、入社して最初に覚えた紙の寸法表や連量表が役に立つというお話でしたね。」
「あ、そうだったね。で、その時に気をつけてほしいポイントを『次の機会』に話そうと思っていたんだ。」
「紙の目なりに注意が必要と仰っていましたが・・・」
「あ、覚えてるんだね。じゃあ、どう注意が必要かは分かる?」
「・・・・・・」
「一言でいうと『混ぜるな危険』ってことなんだけどね。まあ、順番に、『目なりとは何か』から始めようか。」

1.紙の目なり

「目なりが何か、自体は知っている?」
「紙の繊維が並んでいる方向、ですね。」
「そうだね。紙の作り方を大まかに言うと、
 ①木材チップや古紙から繊維(=パルプ)を取り出して叩いて解して薬品と混ぜて原料(=紙料)をつくる。
 ②網で紙料から水分を落として湿紙をつくる。
 ③湿紙に圧力をかけて水分を搾る。
 ④さらに熱を加えて乾かす。
ってことで、これは手漉きの和紙でも機械抄きの洋紙でも基本的には変わらない。ただ、手漉き和紙が槽から簀で紙料を汲み上げて漉くのに対して、機械抄紙の場合は簀の役目をする網が走行していて、その上に紙料を吹き付けて網と一緒に走行しているうちに脱水される仕組みになっている。

 この時、紙料が狭い隙間から高速で吹き付けられることによって繊維が一定方向に並ぶ。これが紙の目、目なりってわけ。」

「長辺に平行に目が流れているのが縦目だから、平判にカットされる前の巻取紙はみんな縦目ってことですね。」
「うーん。巻取の目なりについてはまた別の事情があるんだけど、とりあえず、巻取の段階では目の流れは一方向しかないっていうのは合ってるよ。で、これをカットすると平判になるんだけど」
「繊維の方向が長辺に平行になるように切った場合が縦目(T目)、垂直になるように切った場合が横目(Y目)になるというわけなのですね。」

2.目なりによる性質と代替時の注意

「目のことを流れ目とも言うんだけど、この目の流れに平行か垂直かで性質に違いが出るんだ。

一番影響が出そうなのは、折りやすさに関する違いかな。冊子だったり、1枚ものでも折加工がある印刷物の場合、目なりが逆だと、折れにくかったり、折ったところがシワになったり、背割れって言って折ったところの紙の表面がはがれてしまったりして、作業適性や仕上がり品質が悪くなってしまうことがあるんだ。」
「代替商品を手配する場合、T目がないならY目で、って安易に考えてはいけないってことですね。」
「あと、目が混ざる、とかも要注意。」
「『混ぜるな危険』?」
「そう。T目で1,000枚欲しいんだけど500枚しかないから残りはY目で、とか。A3が欲しい時にA判や菊判の在庫がないから四六判から5切の目なり混じりで断裁する、とか。印刷機や折機で紙詰まりが発生するとか、冊子の仕上がりが揃わないとか、いろいろなトラブルのもとだから、基本的には避けた方が良いし、どうしても目が混ざる場合は本当にそれで大丈夫か、慎重に確認した方が良いよ。」

「冊子は開いた状態で横目だとめくりやすいっていう特徴があるから、その出来上がりも考えて紙を手配しなきゃいけない。例えば、仕上がりがA4で8ページの冊子もので、菊半裁の機械を使って印刷する場合には、紙の手配はどうなると思う?」
「半裁に表裏それぞれ4面の8面付で印刷することになりますから、半裁でT目、全判だとY目のA判か菊判の紙を手配する必要があります。」
「そうだね。でも、残念ながらA判菊判のY目がない。T目ならありますけど、って言われたら?」
「えっと・・・」
「実際の対処はいろいろだけど、後工程のこととかいろいろ考えたうえで、刷る機械を変更したり、面付まで変更する必要も出てくるかもしれない。」
 だから目なりは大事だよっていう話でした、と締めくくったシートくんに、コマキさん、思わず拍手します。
「研修で習ったことと実際の仕事の関係が理解できたように思います。」
「良かった。実際に役に立つと思うと、知識をつけることも面白くなるしね。」
 シートくんの言葉にコマキさんは大きくうなずきますが。
「シートくんがあんなに立派なことを・・・!」
「でも、シートくん自身はまだ、知識と実行が結びついていないことがあるような・・・」
 先輩たちの指摘に汗が止まらないシートくんなのでした。

(初掲載:2019年8月10日)

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