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【紙のソムリエ】シートくんとロール先輩の紙修行 33 紙は格差社会?~価格の計算~

ある日の終業後。自席で書類を見ながら苦笑いを浮かべるシートくんに、ロール先輩が「どうしたの?」と声を掛けます。
シートくんが見せてくれたのは1枚の紙。お客様に提出する見積の、計算過程が書かれています。「ああ、なるほど。紙単価の格差を考えてないみたいだね。」ロール先輩も苦笑いを浮かべます。
後輩に見積書の作成を依頼したところ、これが返ってきたという話。
「これ、お客様に出しちゃったの?」
「いえ、まだです。急ぎじゃないんで、帰ってきてからチェックしようと思って・・・なんか、こういう間違い、懐かしいな、って。」
「シートくんも良くやってたもんね。」
「そうなんですよね。・・・でも、僕は先輩に教えて頂いたので、これが間違いだってわかるんですけど・・・・・・」
首を傾げて、シートくん、問いかけます。
「先輩。紙の価格には色々な格差があるんだよってこと、ひょっとしたら、一般的な知識ではないんでしょうか?」

「うーん。まあ、知らなくても何とかなるのはなる、かな。基本的に紙の価格は紙屋さんが出してくれるから、工務はその価格を基に営業さんに紙の価格を伝えるし、営業さんは更にその価格を基にお客様に見積書を提出する。基になる価格が分からなければ、その都度、工務や紙屋さんに確認すれば良いわけだから、そもそも紙の価格がどういうシステムで出されているか、っていうのは、余分な知識かもしれないね。」
「でも、先輩、教えてくれた時に言ってたでしょう?知らなくても何とかなるけど、知ってた方がより理解が深まるし、価格交渉もしやすいよって。僕も後輩にそういうこと、教えてあげたいと思うんです。」
「じゃあ、シートくん、紙の価格には色々な格差があるけど、主なところはどんなもの?」
「えっと・・・・・・」

数量格差 紙を購入する枚数によって、紙の単価が変わってくること。
一般に、端数(1包の入数未満の数量)⇒包⇒連、の順番に単価が安くなることが多い。
(数量区分については、上記通りではない場合もある)
ファンシーペーパーの場合は、端数よりさらに単価が高い超端数(包入数が100枚以上の場合、一般に1~49枚までの数量)という区分がある場合がほとんど。
色格差 色上質やファンシーペーパーなどで、紙の色によって単価が変わってくること。一般に濃い色やはっきりした色の方が、淡い色に比べ単価が高い場合が多い。
連量格差 紙の厚さによって、紙の単価が変わってくること。薄いものの方が高くなる『薄物格差』と、厚いものの方が高くなる『厚物格差』がある。
再生紙格差 同一品種であれば、一般品より再生紙の方が高くなること。例えば、上質紙より再生上質紙の方が単価が高くなる場合。

「でも先輩、どうして紙の単価には格差があるんですか?」
「基本的にはメーカーさんのコストの問題だね。良く言われてる理由だと・・・」

数量格差 包を開いてしまうと、紙を数える、残った紙を保管・管理する、など余分なコストがかかってしまうため。また、基本的には、1枚出荷・配送するのも1,000枚出荷・配送するのも、最低限同じだけのコストは掛かるため、数量が多いほど、1枚当たりのコストは下がる計算になる。
色格差 濃い色の紙を作る場合、染料自体のコストのみならず、着色前後の機械の洗浄などで他の色よりも余分なコストが掛かるため。
連量格差 『薄物格差』の場合は、中程度の厚さの紙を抄造する場合と比べ、抄造スピードを落とす必要があり、生産性が落ちる分コストが上がるため。
『厚物格差』の場合は、原料が余分に必要でコストが上がるため。
再生紙格差 再生紙の場合、原料の古紙の脱墨を行うなど、余分な工程が必要になるため。

「でも、同じ色でもメーカーによって格差が有ったり無かったりするし、国内品と輸入品でも違ったりするからね。」
「再生紙格差も、最近は、以前に比べて小さくなっているって話もありますしね。」

「ただ、その辺りの格差の話を分かっていないと、見積をする時にやってしまいがちなミスがあるってことなんだけど・・・」
「そうですね。例えば・・・・・・

・紙の必要枚数が1,000枚から800枚になった時に、数量が減った割合に等しく紙の単価も下がると考えて見積してしまう。
・お客様の希望で紙の色だけが変更になった時に、同じ価格で見積もってしまう。
・紙の厚さが一段厚く(或いは薄く)なったのに、紙の仕入れ価格を再確認することなく見積してしまう。
・同一品種であれば、一般紙も再生紙も同じ価格と考え、見積してしまう。

・・・とか。先輩や紙屋さんに聞けば良いんですけど、急いでたりするとうっかりやっちゃうんですよね。」
「でも、そのうっかりで利益が飛んじゃったりもするんだからね。紙の必要枚数の計算を間違えちゃいけないのと同じくらい、きちんと確認する必要があるって覚えておいてほしいな。」

「紙の価格の格差って、基本的にはキロ単価で決まってるんですよね?」
「紙屋さんの業界では、ね。ファンシーペーパーなんかは全く違うけど、一般紙は基本的にキロ単価で計算されていることが多い。」
「例えば、上質紙70kgの単価を紙屋さんに聞いて、1枚35円ですよ、って返事をされた場合は・・・

①1枚単価が35円だから、1,000枚なら35X1,000で35,000円
②上質70kgだから、この紙1,000枚の重量は70kg
③この紙のキロ単価(1キロ当たりの価格)は35,000/70で500円

・・・で、全く同じ紙、同じ枚数で55kgの厚さの場合にどうなるかっていうと・・・・・・

①全く同じ紙、同じ枚数だから、キロ単価は基本的に同じ500円
②但し、上質紙の場合、55kgには格差が5円付くから、キロ単価505円になる
③この紙1,000枚の金額は55kgX505円=27,775円だから、1枚あたりは約27.80円

・・・これを、格差を考えずに、500X55/1,000=27.50円、って計算しちゃうと、お客様への見積も違ってきちゃうってことですよね。」
「まあ、実際には、同じ紙で同じ枚数でも、連量や目なりが違うと在庫場所が違ってきて、運賃が余分に掛かったり、って事態も考えられるけどね。」

「先輩。紙価格の格差って、どんな品種でも同じ格差なんですか?」
「違うよ。それぞれの品種で特有の格差が有るし、さっきも言った通り、同じ品種でもメーカーによって格差が有ったり無かったりもする。数量別格差にしたってばらばらだったりするしね。その格差のせいで面白い、というかお得な現象もあって・・・」
話し続ける二人に、帰り支度を終えたパレットちゃんが「何の話?」と首を突っ込みます。
「お疲れ様です、パレット先輩。紙の格差の話をしてるんですよ。」
「かくさ?あの、日中の最低気温と最高気温の・・・」
「それ、別のかくさです。」
「じゃあ、この前のシートくんの出張のお土産が、私やロールちゃんにはお饅頭1個だったのに、1人だけご当地キャラストラップもらった子が・・・」
「先輩!何でそんな話知ってるんですか!てか、それが言いたくて話に入って来たんですか?!」
真っ赤な顔で涙目になるシートくんと、満足げな高笑いを響かせ去っていくパレットちゃんを眺めながら、「シートくんとパレットちゃん・・・まさに格差・・・」と小さく呟くロール先輩なのでした。

(初掲載:2014年12月10日、加筆修正:2019年12月6日)

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