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【紙のソムリエ】シートくんとロール先輩の紙修行 34 新年最初のお楽しみ~年賀状のあれこれ~

「明けましておめでとうございます!」
年明け初日、元気に出社したシートくん、明るい声でロール先輩に挨拶します。
「おめでとう。今年も宜しくね。」
微笑んで返したロール先輩、一転して、恐る恐るシートくんに問いかけます。
「あのね、シートくん?」
「何ですか?」
「えっとね・・・年賀状、送ってくれて有難う。でも・・・あの年賀状、みんなに送ったの?」
きょとんとした顔から一転、破顔して、シートくん、手を振ります。
「ああ、あれ。違いますよ。しゃれが通じそうかなぁーっていう人だけです。」
「ああ、それなら・・・」
ほっと息を吐いて、ロール先輩、また笑顔を浮かべます。
シートくんも笑いながら、「年末にちょっと話題になってたじゃないですか、『あの郵便局が!』って。どんなのだろうって見てみたら、意外に可愛くて。せっかくだし、誰かに送ってみたいなあと思ったんです。」
「そうなんだ。」
「厳しい先輩方やお客様にはもっと無難な年賀状にしました。・・・あ、でも。」
「?」
「もうちょっと工夫すれば良かったかな、って、先輩から頂いた年賀状を見て思いました。先輩の年賀状って、私製葉書ですよね?」

「うん。せっかくこの仕事してるし、年賀状にはいつもオリジナルの紙を使おうかな、って思ってるんだ。」
「私製葉書って、どんな紙を使っても良いんですか?」
「そうじゃないよ。紙だけじゃなくて、葉書自体に、ちゃんと取り決めがあるの。郵便法に基づいて、日本郵便株式会社さんが『内国郵便約款』っていうのを決めてるの。官製葉書・・・って今はもう言わないんだけど、こっちの方が分かりやすいから使うとして、要するに日本郵便さんが作ってる葉書はこんな規格で、私製で作る場合はこういう規格にして下さいね、ってことが決められている。往復じゃない、普通の葉書について抜粋すると・・・」

官製葉書(正しくは、日本郵便株式会社が発行する郵便葉書)
葉書サイズ 100㎜X148㎜
紙質及び厚さ 筆書及び送達に支障がないもの
表面の色彩 白色または淡色
その他 料金額面や「郵便はがき」の文字、受取人や差出人の住所を書くところなどが決められている。
私製葉書
葉書サイズ 短辺は90~107㎜まで、長辺は140~154㎜までの長方形
紙質及び厚さ 官製葉書同等以上
表面の色彩 白色または淡色
重量 2g以上6g以下
その他 ①決められた場所に「郵便はがき」或いはそれに相当する文字を表示する。
②決められた場所に切手を貼る、或いは料金受取人払の表示をする。

(『内国郵便約款』第21条、第22条より)

「へえ。じゃあ、色上質の赤とかで葉書って作れないんですね。」
「表は白、もしくは淡色、だからね。」
「メール便に入れて送れば・・・」
「信書じゃなきゃね。とりあえず今のところ、一般の信書を違法じゃなく送れる、日本郵便以外の民間会社って無いはずだけど。」
「ということは、最悪・・・」
「送る自分だけじゃなくて、相手の方にも、運送会社さんにも迷惑が掛かるってことだね。」
「ですよねー・・・」

「無理して赤とか使わなくても、白で表情のある紙を使ったり、印字適性の高い紙を使ったり、色々紙を選ぶのが楽しいんだよね。」
「今年はニュアージュでしたっけ。・・・紙を選ぶ時に、注意することとかありますか?」
「えっと・・・」

サイズ 100㎜X148㎜に仕上げるため、全判から何枚取れるか計算する。
四六判1枚から葉書サイズが50枚取れることを覚えておくと便利。但し、全判の目なりとは逆に仕上がるので、使用するプリンターの紙送りの方向を確認しておかないと紙詰まりやカールを起こすこともある。
厚さ 約款によれば、1枚当たり2~6g以内であれば良いので、計算上は136g/㎡~405g/㎡の紙であれば良いことになるが、使用するプリンターにより使用できる紙の厚さが決まっているため、プリンターで出力する場合は仕様を確認しておく必要がある。一般的には、四六判で135kg~180kgくらいの厚さのものが使用される場合が多い。
紙質 プリンターを使用する場合は、その仕様を確認しておく。一般に、表面にエンボスや風合いがある紙はインクジェット、平滑で光沢があるものはレーザープリンターに向いており、逆の場合は印刷が定着しないなど不具合が起こることが多いと言われている。また、アルミ蒸着紙やフィルムなどはプリンターに障害を起こすことがあるので(溶けたフィルムなどがドラムに巻き付いてしまうなど)使用しない。

「結構、プリンターの仕様に左右されちゃうんですね。」
「手書きなら問題ないんだけどね。」
「となると、使いやすいのは、上質紙、ケント紙、ファンシーペーパーでもエンボスがなるべく浅いもの・・・」
「でも、表情っていう意味では、かすれも味の一つだし、あえてエンボスが深いものを使ってみるっていうのも有りかも。プリンターにとって禁忌品では無いものの中から、になるけど、色々使ってみてしっくり来るものがあれば良いな、っと思って、毎年使う紙を変えてるんだよね。」
「紙屋さんにお願いすれば、1枚からでも現金売りしてもらえますもんね。断裁もしてもらえるし。」
「それなりにコストはかかるけどね。」

「でも先輩。私製葉書って、お年玉くじついてなくて、楽しみが一つ減りませんか?」
「あれ、シートくん、私の年賀状の切手、お年玉くじ付きだよ?」
「え、そうでしたっけ。良く見てませんでした。」
「年賀切手を買う時に、お年玉付きをって指定すると買えるよ。普通のよりちょっと高いけど、やっぱり年賀状にはお年玉くじが欲しいよね。」
年賀状について話す二人のところに、「明けましておめでとうございます」とパレットちゃんがやって来ます。
「あ、おめでとうございます、パレット先輩。」
「今年も宜しくね、シートくん。年賀状有難う。・・・シートくんの趣味って、一貫してるよね。」
にまりと笑うパレットちゃんに、シートくんの笑顔が引きつります。
「先輩?・・・それはどういう意味で・・・・・・」
「シートくんの年賀状のイラストって・・・ちゃんに似て・・・・・・・」
「えーっと、ちょっと黙りましょうか、パレット先輩!・・・・・・何か聞こえましたか、ロール先輩?」
パレットちゃんを制するシートくんの迫力に、ロール先輩、首を横に振りますが・・・・・・
(あの年賀状見た時、私もそう思ったんだけど・・・そもそも、あれをパレットちゃんにも送るところが、うかつだよね、シートくん・・・)と、心の中で呟くロール先輩なのでした。

(初掲載:2015年1月10日、加筆修正:2019年12月6日)

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