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【紙のソムリエ】シートくんとロール先輩の紙修行 30 それぞれ個性があるんです~上質紙~

草木も眠る丑三つ時・・・にはまだ大分遠い宵のうち。ぐすっ、うぅ・・・静かな事務所に突如響く泣き声に驚いて、ロール先輩が顔を上げると、シートくんが自席で目をこすりながら何かを熱心に読んでいます。
「どうしたの、シートくん?・・・あ、ひょっとして、また、パレットちゃんからお叱りの手紙が・・・・・・」
「違います。これを読んでたら、つい・・・」
シートくんが渡してくれた本のタイトルを見て、「あぁ、これ・・・」安心してロール先輩、息を吐きます。
「これなら、私も読んだよ。『一発通紙だ』のところは、確かに我慢できなかったかな。」
「僕はもう、一番最初の、『うちの紙は癖があるから、本屋さんに並んでいてもうちの紙かどうかすぐ分かる』のところから、うるっと来ちゃって・・・」
「いや、そこ、まだ、プロローグだし・・・」
「やっぱり印刷は紙ですよね!」
「・・・その言葉も、なんか軽いよね・・・・・・」
ロール先輩、ページをぱらぱらとめくりながら、呟きます。
「でも、ここに書かれてるメーカーさんのプロ根性というか、製品とか仕事への愛や責任感って、なんか自分の仕事を振り返った時に色々考えさせられるよね。」
「?」
「例えばシートくん、上質紙が必要な時に、どの銘柄にするか、どうやって選んでる?」

「上質紙か・・・この前の、新入社員さんへの勉強会でも、上質紙ってあまり言う事が無くて、さらっと流しちゃったんですよね。」
「どんな風に説明したの?」
「えっと・・・まず、紙は大きく分けて、薄い『紙』と厚い『板紙』に分かれています。で、この『紙』の中に『印刷・情報用紙』っていう品種があって、更にその中が、塗工してあるかどうかなどで分類されて・・・」

「この、非塗工印刷用紙を更に細分化すると・・・」
「この、印刷用紙Aに属するのが、上質紙だよ、って。」
「じゃあ、上質紙の特徴は?」
「えっと・・・」
上質紙の特徴 晒化学パルプ100%使用。白色度75%程度以上。
(古紙使用の再生上質紙も印刷用紙Aに分類されるが、こちらは原料に古紙を使用、
白色度は70%程度であるものが多い)
用途 汎用性に富み、様々な用途で使用される。
本文用紙、筆記用紙、チラシ等商業印刷など。
その他 上質紙に塗工したものが上級コート紙、アート紙などになる。

「基本の紙なので、各メーカーさんが上質紙という品種の紙を造っています。主なところで言うと・・・」

メーカー 銘柄
王子製紙 OKプリンス上質 OK上質紙
日本製紙 npi上質 しらおい npi上質バルキー
大王製紙 ユトリロ上質
北越コーポレーション キンマリSW キンマリV 紀州上質紙N
三菱製紙 金菱A 金菱FSC‐MX
中越パルプ工業 雷鳥上質
丸住製紙 丸住上質紙

(※紙業手帳2019年版より華陽紙業にて抜粋)

「以前、上質紙には蛍光染料が入っているのと入っていないのがあるって話をしたけど、覚えてる?」
「はい。蛍光入りは白さが求められる参考書の本文用紙や一般印刷用なんかに使用されて、
無蛍光のものは食品関係に使用されるって話でしたよね?」
「そう。この中だと、
しらおい
キンマリV
紀州上質紙N
が無蛍光の上質紙になるから、お客様の要望に応じて使い分けをしてね。」

「蛍光入りか無蛍光か、っていうのは、割と分かりやすいんですけど、それ以外の特徴ってあまり差が無いって言うか・・・」
「そうだね。以前は輸入紙だと紙粉が多いって話もあったけど、最近はそれも改善されてきたって話だし、国内産ならどこのメーカーさんの商品でも品質は安定しているしね。」
「ですよね。どこのメーカーさんの紙を選んでも、生産性に支障はないし、印刷仕上りも綺麗。そうなると、上質紙を選ぶ決め手って、在庫が揃うか、価格メリットがあるか、或いは、リピート仕事なら前回と同じ紙を、ってことになっちゃいがちで・・・」
「と、思うでしょ?でも、それぞれの銘柄で、結構個性があったりするんだよ。そういう事を考えるとね。用途に応じた適切な紙を、メーカーさんが造ってる時と同じだけの熱意を持って選んでるかな、とか、考えちゃうんだよね。」

「楽しそうだねぇ~」
話し込む二人に声を掛けたのはパレットちゃん。お菓子の箱を手にしています。
「差し入れもらったんで、おすそ分け・・・と思ったんだけど、シートくんは要らないかな?」
本のタイトルを目にして、にんまりと笑うパレットちゃんに、涙目のシートくん、反撃します。
「ひどいです、パレット先輩。なんでそんなこと言うんですか?」
「だって、今日のお菓子は、部長の東京出張のお土産のくずもちなんだもん。」
「!そういうことじゃないじゃないですか、この本は。・・・だったら、先輩は、赤飯饅頭をもらっても食べないんですね?!」
「私はどのメーカーさんも好きだから。くずもちも、赤飯饅頭も、イタリアンも、鮎菓子も食べるよ?」
「僕だって、どのメーカーさんもすごいと思ってますし、第一、鮎菓子、今、関係ないですよね?!」
楽しそうに(?)言い争いを始める二人。「この本は、そんな軽い冗談に使って良い本じゃないと思うよ。」「第一、どのメーカーさんも助け合ってるじゃないの。」と、止めようとしても聞く耳を持ちません。疲れ果て、溜息を吐きながら、「疲れた時はモナカだよね・・・・・・」と現実逃避を始めるロール先輩なのでした。

(初掲載:2014年9月10日、加筆修正:2019年12月5日)

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