【紙のソムリエ】シートくんとロール先輩の紙修行 68 新入社員様基礎編⑩塗工紙
「新入社員の皆様、こんにちは。さすがに半袖は止めたシートです。」
「若手社員の皆様、こんにちは。肌の乾燥が気になる季節になったなと思うロールです。」
「やっぱりこの季節になると、手が荒れたりするんですか?」
「手もだし、顔とかもね。ぴりぴりして嫌だなと思うよ。」
「え?でも、顔はいっぱい塗ってれば大丈夫なんじゃ・・・」
「・・・それは厚化粧だって言いたいのかな?」
「・・・・・・えっと、そう言えば、紙もお化粧するんですよね。今日はそんな、塗工されている紙のお話しです。」
「・・・・・・」
1.塗工紙
「塗工紙とは、紙を抄いた後、顔料などで両面、あるいは片面をコーティングして仕上げる紙のことを言います。紙の分類では、『印刷・情報用紙』のなかの『微塗工印刷用紙』『塗工印刷用紙』が該当します。」
「さらに、原紙に塗る塗料の量でコート紙、アート紙などに分類されていて、一般的には、
という関係になっています。」
「要するに厚化粧と薄化粧の違いですね。」
「・・・・・・」
2.塗工紙の利点
「抄かれた原紙はコーターという装置で塗料をコーティングされた後、カレンダーという装置で圧力や熱が加えられて艶が出され、塗工紙として仕上げられます。」
「塗料をコーティングして仕上げをすることで表面の光沢や白色度、平滑性、印刷適性などが上がり、
・印刷仕上がりが良い
・高級感が出る
等の、塗工紙の利点が生まれるわけです。」
「塗工紙と言えば、もう一つ必ず話が出るのが、『グロス』『マット』の違いですよね。」
「グロスとマットの違いは、仕上げのカレンダーの工程の違いだね。カレンダーは金属やコットン製などのロールが何本か組み合わされた装置で、その間をコーティングされた紙が通ることで熱や圧力が加えられて光沢が出るように仕上げられますが、圧力が掛けられる分、紙がつぶされて厚さが減るという側面もあります。このカレンダー工程が省かれずに強光沢だけど厚さは出ない状態に仕上げられたのが『グロス』。で、このカレンダーの工程を省いたり少なくしたり特別な装置を使ったりして、光沢はそこそこだけど厚さは減らないように仕上げられたのが『マット』、あるいは二つの中間の『ダル』ということになります。」
「昨今の日本の社会構造の変化で、以前よりもマットが好んで使われるようになったという話もありますね。」
3.白さの違い
「そう言えば、いろいろなメーカーのいろいろな塗工紙を見比べると、白さにもいろいろあるなあって思うこと、ない?」
「よく、〇〇さんのコートは伝統的に青っぽい、◇◇さんのコートは赤っぽい、とかって話は聞きますよね。」
「原料とか塗料とか添加剤とかの設計は各メーカーさんそれぞれのノウハウなんだけど、その違いで、青っぽい白、赤っぽい白、っていう違いが生み出されているの。例えばカタログを作るにしても、シャープな白が似合うものと、温かみの感じられる白が似合うものは違うでしょ?」
「塗工紙を選ぶにしても、各メーカーさんの違いを理解してPRしたいものに合った銘柄を選ぶことが重要、ってことですね。」
「塗工紙って、ただおしろいが塗ってあるってだけじゃなくて、いろいろ奥が深いんですね。」
「そんなところもお化粧と似てるかも。シートくんは簡単に厚化粧、薄化粧、って言うけど、そんな単純な話じゃないんだからね。そもそも洗顔の仕方から始まって、下地はどうする、ファンデはどうする、ファンデにしたってパウダーなのか・・・」
「あ・・・えっと、良いです、ごめんなさい、聞いても分からないんで・・・・・・てか、謝りますから、僕で試そうとしないで下さい!」
(初掲載:2017年11月10日、加筆修正:2019年12月11日)