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【紙のソムリエ】シートくんとロール先輩の紙修行 51 夢の新素材?~CNF~

ある昼休み。話が盛り上がる女性たちに、シートくん、何の話かと首を突っ込みますが、ロール先輩に苦笑で返されます。
「この時期は化粧に迷うねって話だよ。べたつく時期だからさらっと済ませたいけど、乳液とかを省略するとかえってニキビができやすいなんて話もあるし。」
ロール先輩が溜息を吐けば、
「日焼けもね。曇りや雨だからって油断してると、あっという間にくすみが・・・」
とパレットちゃんもうめきます。
「え、え~っと・・・」話についていけないシートくん、
「そ、そう言えば、王子さんが化粧品を開発しているらしいですね。」
何とかひねり出した話に、ロール先輩が応じます。

「セルロースナノコスメのことかな?テレビや雑誌で紹介されたせいか、最近セルロースナノファイバーの名前をよく聞くようになったよね。」
「そう言えば、総務で印刷とか紙に関する新聞記事を収集しているけど、最近の製紙関連の記事は大半が発電かセルロースナノファイバーの記事だと言ってもいいくらい。」
「何せ注目の新素材だからね。と言っても、注目されたのが最近っていうだけで、研究自体は随分前からされてたらしいよ。」
続く話に「あの!」とシートくんが割って入ります。
「あの・・・セルロースナノファイバーの名前は確かによく聞くんですけど・・・そもそも、セルロースナノファイバーって何なんですか?製紙メーカーとどんな関係があるのかいまいち分からないっていうか・・・」
「ざっくり言うと、すっごく細くほぐされたパルプってことなんだけど、もう少し詳しく説明した方が良いかな?」

「まず、今現在の洋紙の原料の一つは木材だけど、その木材は大半が、セルロースとヘミセルロースとリグニンから出来ているの。」

(参考文献:『紙とパルプの科学』山内龍男・著 京都大学学術出版会 2006年 より)

「セルロースはブドウ糖がくっついてできた炭水化物だね。樹種によっても違うけど、大体40~50%くらいがセルロースで、集まって束になって木の細胞壁の一部を形作っている。このセルロースの束のことを、セルロースフィブリルとかセルロースミクロフィブリルとかって呼んでたんだけど、最近の日本ではナノセルロースっていう呼び方が定着してて、その中でも比較的長い繊維のものをセルロースナノファイバーとかCNFって呼んでいるっていう話。」
「なるほど。じゃあ、そのセルロースナノファイバーがたくさんくっついて塊になったものがパルプってことですね。」
「そうだね。ただ、作り方からいうと逆かな。まず木材からチップ、チップからパルプが作られて、このパルプを機械的な方法や化学的な方法でほぐして取り出されるのがCNFっていう順番だね。」
「つまり、CNFは紙の兄弟みたいなものってことですね。」

「でも、CNFはどうしてこんなに新素材として注目されているんですか?」
「理由はいくつかあるよ。まずは、比較的簡単にCNFを製造する技術が開発されたこと。もともと、天然のセルロースフィブリルってリグニンなんかと強く結合してて、それだけで取り出すのって簡単じゃなかったんだって。それを各国の研究者が色々な方法を編み出していって、だんだん方法が進化していく中で、2006年に東大の磯貝先生たちが『TEMPO触媒酸化法』っていうCNFの製造方法を確立して論文発表したの。これが、CNF製造に必要なエネルギーが従来の100分の1で済むっていう画期的な方法だっていうんで、CNF製造や応用開発に大きく弾みがついたって話。」
「10年前ですね。」
「同じ10年前には、京大の矢野先生がCNFと樹脂を組み合わせて、軽くて強い素材を作ることに成功したっていう発表もされている。これも理由の一つ。CNFはパルプや紙より繊維がほぐされている分、繊維同士が結合する部分が多くて、高強度なんだって。その上、軽い。鉄の5分の1の軽さで5倍の強度がある、熱にも強くて、熱による変形はガラス繊維の50分の1程度だから高温での加工も可能、ガスバリア性もある、いろいろ役に立つ特徴がある上に、植物由来だから環境にも優しいし、森林国の日本にはもってこいの素材だっていうんで、今では官民挙げてCNFの技術開発、応用確立を進める体制になっているの。」

「でも、CNFがどうして化粧品になるんですか?」
「違うよ、シートくん。CNFがそのまま化粧品として使われるわけじゃないの。CNFのいろいろな特徴が他の素材と組み合わせた時に力を発揮して、高付加価値な製品になることが期待されているの。セルロースナノコスメは今年中に製品販売されるんじゃないかって噂されているけど、もう既に商品化されているものもあるんだよ。」

大人用紙おむつ TEMPO触媒酸化法で製造されたCNFの表面には金属イオンや金属ナノ粒子を密着させるのが容易であるという特徴を生かして、消臭機能や抗菌性を高めた紙おむつを日本製紙が開発。商品化し、昨年10月より販売中。
ボールペン 三菱鉛筆がCNFをインクに利用して、速書きでもかすれないボールペンを昨年商品化。欧米で先行発売されていたが、今年5月国内でも販売開始。
自動車 CNFの軽くて強い特徴を生かし、樹脂との複合素材で自動車のドアやボンネットなどを新素材に置き換える研究が進行中。従来より軽く、燃費の良い自動車の開発が期待されている。
化粧品 CNFの保水性、増粘性、あるいはゲル状のものが振ると液体化するといった特徴を生かした商品化が期待されている。
包装材 CNFのガスバリア性(酸素を通さない性質)を利用して、食品の鮮度保持に貢献する包装材の開発が進行中。

「ほかにも、家電、建築材料、IT関連、食品、いろいろな分野で応用研究が盛んになっていて、市場は1兆円規模になるとも言われているの。」

「もう一つ、CNFの良いところは、将来的には価格が安くなるんじゃないかって期待されているところなの。例えば、炭素繊維の方が引張強度は強いんだけど、コストがまだ高いんだって。CNFの元になるパルプは単価の低い素材だから、これから技術が発展すれば、CNFやその複合素材の製造コストがぐんと下がって、炭素繊維より価格競争力のある素材になるんじゃないかってことも言われているの。」
「炭素繊維って、飛行機の部品なんかにも使われてますよね。それがCNFになったら、本当の意味で「紙飛行機」って感じで面白いかも。あとは・・・あ、軌道エレベーターとか!」
「軌道エレベーター?」
「カーボンナノチューブが開発されたおかげで、軌道エレベーターが実現するかもしれないって話がありましたよね。カーボンナノチューブと炭素繊維がどう違うのかも分からないし、専門家さんには笑われちゃう話だと思いますけど、軌道エレベーターが植物由来素材で出来てたら面白いと思いませんか?」
宇宙に届く木かあ、ほんとの世界樹って感じで、ゲームかアニメみたい!・・・とシートくんは一人で盛り上がっていますが・・・・・・
「宇宙に届く木?」
「・・・ジャックと豆の木?」
「・・・・・・CM?・・・・・・」
夢見がちなシートくんを横目で見て溜息をつき、さっさと仕事に戻るロール先輩とパレットちゃんなのでした。

※文中敬称略
※上記の文章は、京都大学やNHK、王子HD、日本製紙、その他CNFに関する記述をされている各サイト様等の内容を参考に2016年6月、華陽紙業にて作成致しました。

(初掲載:2016年6月10日、加筆修正:2019年12月10日)

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