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【紙のソムリエ】シートくんとロール先輩の紙修行 48 王子様や大王様?~製紙会社~

「ロール先輩、聞いて下さい!大変です!」爽やかに始まる筈の月曜日の朝に、シートくんの声が響きます。
「どうしたの、シートくん。」
「僕の渾身の冗談が通じませんでした!」
「・・・」月曜の朝からがっくり肩を落とすロール先輩にかまわず、シートくんが言い募ります。
「前に先輩と、製紙と発電の話をしていたじゃないですか。その話を友達にしたんです。で、友達にも『トイレットペーパーをエリエールにするかクレシアかネピアかって選ぶみたいに、電力を製紙会社で選ぶ日が来るかもしれないよ』って言ったら・・・」
「言ったら?」
「『エリエールって製紙会社なの?』って・・・!」

「そう言えば」ロール先輩も呟きます。
「前にパレットちゃんにも言われたことあったな。」
「パレット先輩もエリエールのこと知らないんですか?!」
「・・・それ、パレットちゃんが聞いたら怒ると思うよ・・・・・・そうじゃなくて、総務が新卒採用活動の一環で合同企業説明会に参加したんだって。で、パレットちゃんも学生さんに色んな説明をしてたんだけど、王子製紙の名前さえ、聞いたことがないって学生さんがいたって。いろいろ事前に調べては来ても、紙のメーカーのことにまでは手が回らなかったのかも、ってパレットちゃん言ってたけど、聞いた時はちょっと衝撃を受けた覚えがあるよ。」
「・・・そう言えば、その話をした後も、友達と妙に話が噛み合わなくて・・・よくよく確認したら、どうもその子は、『エリエール株式会社』っていう製紙メーカーがあると思っちゃったみたいでした。」
「私たちは日々紙に触れてるから、王子製紙だ日本製紙だなんていうのは当たり前にみんな知ってると思っちゃうけど、ひょっとしたら一般の方には製紙メーカーさんってあまり馴染みがないのかもしれないね。」
「せっかくの僕の冗談が・・・」
「シートくんの冗談はともかく、学生さんや新入社員さん相手に奮闘するパレットちゃんのためにも、ちょっと製紙メーカーさんについておさらいしておこうか。」

「まず、当たり前だけど、製紙会社っていうのは『紙を作っている会社』さんです。」
「でも、一口に『紙』って言っても、いろいろ種類がありますよね。」
「日本製紙連合会さんの統計に沿って、大まかなものを紹介するとこんな感じだね。」

紙(薄いもの)
新聞用紙 新聞紙に使われる用紙。
印刷・情報用紙 チラシやカタログ、パンフレット、書籍などの印刷に使われる用紙や、オフィス・家庭などで使用されるコピー用紙、伝票用紙やレシートなど。
包装用紙 包装紙や紙袋、米袋、セメント袋など、包装用に使われる用紙。
衛生用紙 トイレットペーパーやティッシュペーパー、紙おむつや紙タオルなど。
板紙(厚いもの)
段ボール原紙 段ボールの外側(ライナー)や中芯(内側の波形の部分)など。
白板紙 お菓子や化粧品、医薬品などの箱に使用される用紙。

「この分類には和紙が入っていないし、洋紙でも、電気の絶縁に使う紙とか、建材でも壁紙になる原紙とか石膏ボードの原紙になる板紙とか、いろいろ細かいものがあって、それぞれを作っているメーカーさんが存在するんだけどね。」
「メーカーさんによって得意なものが違いますよね。情報用紙が得意、衛生用紙が得意、板紙が得意・・・」
「専業のメーカーさんもいらっしゃるけど、大きなメーカーさんになると、紙分類の多くをカバーできる子会社とか工場を持っている場合が多いよ。」
「学生さんとか新入社員さんが知っておくべきメーカーさんって、どんなところがありますか?」
「日本経済新聞が国内の紙業界の動向を報道する時に名前を挙げる会社さんくらいは覚えておいてほしいかな。」

王子ホールディングス 新聞や印刷・情報用紙の製造販売が主な担当の『王子製紙』、板紙や包装紙担当の『王子マテリア』、特殊紙やフィルムなどが担当の『王子エフテックス』など、数多くの子会社、グループ会社を有する製紙グループ。
日本製紙グループ 紙・板紙・パルプなどを総合的に製造販売する『日本製紙』を中核とし、数多くの子会社、グループ会社を経営する製紙グループ。
大王製紙 家庭紙が有名だが、印刷・情報用紙、産業用紙なども総合的に手掛ける製紙会社。
北越紀州製紙 北越製紙と紀州製紙の合併でできた、各種の紙を総合的に扱う製紙会社。
三菱製紙 アート紙やデジタルメディアなどで特色を打ち出す、三菱グループの製紙会社。
レンゴー 板紙・段ボール・包装などの総合パッケージ企業として、王子・日本に次ぐ売上を上げる板紙メーカー。

「他にも、例えば、中越パルプ工業さんとか、特種東海製紙さんとか日清紡ペーパープロダクツさんとか。上に挙げたメーカーさんは総合的にいろいろな紙の分野をカバーされていることが多いけど、ある分野に特化して製造販売されているメーカーさんとか、国外のメーカーさんとかも考えると・・・」
「ごめんなさい、これ以上数が増えると脳の容量オーバーします・・・で、こういうメーカーさんから僕たちに紙が届くわけですね?」
「流通経路がいろいろあるんだけど・・・チラシとかカタログ、いわゆる商業印刷って言われる印刷物を扱う会社の場合、メーカーさんが製造した紙が、代理店さんや府県商(紙卸)さんといった流通会社さんを通じて印刷会社さんに届く、っていうのが、一般的な紙の流通の流れになるね。」

「国内の代表的な製紙メーカーさんは分かったとして、エリエールとかネピアとかと製紙会社さんの関係って、どう説明したら良いですか?」
「エリエール、ネピア、クリネックスなんかは、それぞれ、メーカーさんが衛生用紙に付けているブランド名だよって説明すれば良いと思うよ。代表的なところだと・・・」

エリエール 大王製紙が展開するトイレットペーパー、ティッシュペーパーなどのブランド名。
クリネックス、
スコッティ
ともに、日本製紙グループ所属の日本製紙クレシアが展開する、トイレットペーパー、ティッシュペーパーなどのブランド名。元は別々の会社で生産されていた別ブランドだったが、合併により、同じ会社に二つのブランドが並立する形となった。
ネピア 王子ホールディングスに所属する王子ネピア株式会社が展開する、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、紙おむつ他のブランド名。

「ただ、この辺りは大手製紙会社さんが作っているパルプ物の家庭紙だから、普段再生紙のトイレットペーパーを使ってるよって場合はこれに当てはまらないと思うけどね。」

「そう言えばシートくん、ティッシュペーパーは戦争から生まれた紙だってことは知ってた?」
「そうなんですか?」
「第一次世界大戦の時に、怪我をした兵隊さんの手当てに使う綿が不足して、その代用品として開発されたのがティッシュペーパーなんだって。マスクのフィルターにも使われたって話だけど、当然戦争が終わるとそういう面での使用が無くなって、化粧を落とす布やハンカチの代わりとして日用品の一つになったって話。日本で言うティッシュペーパーのことをアメリカではクリネックスって言うんだけど、それもその時代かららしいよ。」
「じゃあ、クリネックスがティッシュペーパーの最初の銘柄で、スコッティより前ってことなんですね。」
「ああ、ただ、スコッティの方はね・・・」
話を続けようとしたロール先輩に「ちょっとストップ!」パレットちゃんから制止が入ります。
「?」ぽかんと首を傾げるのに、パレットちゃん、「月曜の朝から、戦争とかトイレとかの話ばかりはちょっと・・・」と溜息を吐き、しゅんと項垂れる二人。
「でも、私のためにって、メーカーさん情報をまとめてくれたのは嬉しかったよ。有難う、ロールちゃん。」
「あ、その辺りから聞いてたんだ。」
「勿論。シートくんが私のこと、大王製紙さんすら知らない子だって思ってたことも分かったし。」
「え・・・あ・・・いや、違いますよ!」
必死に言い訳するシートくんに、怒ったふりをしながら笑いをかみ殺しているパレットちゃん。ぽんぽん続く二人の会話を聞きながら、ティッシュペーパーのポップアップ方式の仕組みを思い出すロール先輩なのでした。

※文中敬称略

(初掲載:2016年3月10日、2019年現在、北越紀州製紙様は『北越コーポレーション』様に社名変更、日清紡ペーパープロダクツ様は大王製紙様のグループ会社として『ダイオーペーパープロダクツ』様に社名変更されています。加筆修正:2019年12月9日)

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