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【紙のソムリエ】シートくんとロール先輩の紙修行 ⑳ 体育と音楽?~段ボール~

「ああ、疲れた・・・」
 事務所に帰ってくるなり、机に突っ伏してしまうシートくん。朝晩の気温が10℃を切ってしまうこの季節に、半袖の作業着で汗までかいている姿に若干引きながら、ロール先輩、ホットコーヒーを差し出します。
「現場のお手伝い、お疲れ様、シートくん。大変だったね。」
「いやあ、箱出しって思ったより大変なんですね・・・」
 お礼を言ってコーヒーを受け取りながら、シートくん、ロール先輩にぼやきます。
「箱詰めと違って、箱出しって、外の段ボールは廃棄物だから気を遣わなくていいし簡単、って思ってたんですけど、この段ボール箱が意外に手ごわくて・・・糊は強いし、破けないし、つぶれないし、ほんっっとうに大変でした!」
「まあ、段ボール箱が簡単に壊れたら役に立たないだろうしね。」
 苦笑するロール先輩に、
「でも、最近は開けやすくて、リサイクルしやすい段ボール箱が多いじゃないですか」
と反論するシートくん。肯きながら、
「コストと用途のバランスってものがあるでしょ?何より、段ボールの第一義は『頑丈なこと』だろうし。」
と、ロール先輩、諭します。
「ところでシートくん、段ボールってどんなものかは説明できるの?」
 ロール先輩の問いに、シートくん、小首を傾げます。
「紙と紙の間になみなみがあるものですよね?」
「その表裏の紙にも、なみなみにも、ちゃんと名前があるんだけどね・・・」先輩、肩を落とします。

「まず、段ボール箱。これは段ボールシートからできている。で、段ボールシートは、表裏の板紙と、真ん中のなみなみでできている。」
「はい。」
「この表裏の紙がライナー、真ん中のなみなみの紙が、中芯原紙、っていうの。」
「ライナーと中芯原紙自体は、板紙の仲間なんですよね?」
「そう。板紙の中の、段ボール原紙って分類に属しているの。」

板紙
段ボール原紙
ライナー
外装用(クラフトライナー) 本来はクラフトパルプ100%使用で強靭なライナー。
外装用(ジュートライナー) 表層にクラフトパルプ、中・裏層に古紙パルプを使用したライナー。強度的にはクラフトライナーに劣るが、安価。
内装用 古紙使用の、強度の劣るもので、内側の仕切り等に利用される。
中しん原紙
パルプしん パルプを主原料とし、中央部分の段のところ(波型のところ)に利用されるもの。
特しん 古紙が主原料。同じく段の部分に利用される。

「このライナーと中芯を貼り合せて段ボールシートが出来るんだけど、組み合わせによって種類が幾つかあるの。」

片面段ボール 段部分の中芯原紙+片面だけにライナーを貼り合せたもの。
両面段ボール 段部分の中芯原紙+表裏両面にライナーを貼り合せたもの。
複両面段ボール 両面段ボール+片面段ボールの5層構造。
複々両面段ボール 複両面段ボール+片面段ボールの7層構造。

「当然だけど、層の数が増えるほど、強度は上がっていくの。」
「段のところがなみなみになっているのも、強度を増すためですよね?」
「その通り。この波型をフルートって言うんだけど、この波の高さで、強度や特性が変わってくるの。」

段の名称 厚み 特   性
A段(Aフルート) 約5㎜ 段が高く、広い空洞がクッションの役目をするため、衝撃吸収性、垂直圧縮強さなどの強度に優れている。
B段 約3㎜ A段に比べ緩衝性、耐久性に劣るが、段が低いため、段の密度が細かく、平面圧縮強さなどに優れている。
C段 約4㎜ AとBの中間強度。欧米ではこの厚さが主流。
E段 約1.5㎜ E段、F段、G段はマイクロフロートとも呼ばれる。
薄くて軽く、強度は低いが、表面平滑性に優れるため綺麗な印刷が可能。コートボールなどの代わりに使われることもある。
F段 約1.2㎜
G段 約0.9㎜
AB段 約8㎜ A段+B段の貼り合せ。衝撃吸収性、破裂強度、平面圧縮強さに優れ、重量物などの梱包に用いられる。
AA段 約10㎜ A段+A段の貼り合せ。重量梱包等に用いられる。
AAA段 約15㎜ A段3枚の貼り合せ。AA段とともに、輸出用の梱包等に用いられる。

「他にも、レンゴーさんの商品でデルタフルートっていう、2㎜厚のものもあるの。元々、段ボールメーカーさんは、長い間、より軽量で環境負荷の低い商品、っていうのを追及してきた経緯があって、1962年以降の40年間で約25%の軽量化が進んだってデータもあるくらいだって。」
「ライナーとフルートか・・・なんか、水曜日の4時間目と5時間目って感じですよね?」
「・・・シートくんの選択科目が音楽だったってのは分かったよ。まあ、シートくんにとって覚えやすいならそれでいいかもね。」

「段ボールシートの用途は、やっぱり梱包用の段ボールケースですよね。」
「それが一番だけど、他にも、パレットとか、家具とか、用途は広がっているの。変わったところだと、被災時のベッドとか簡易トイレとか、避難場所での間仕切りとか。全国のいろんなショッピングセンターを巡回してる段ボール遊園地なんかも人気だし、他の素材から段ボールに置き換わっている用途もあるみたい。」
「でも、原紙は紙だから、水とか火とかには弱いんじゃあ・・・」
耐水、撥水、防火、美粧印刷向け、っていう風に、原紙もどんどん進化してるの。野菜果物ビンを運ぶ昔ながらの梱包用途以外にも、鮮魚向けや冷凍向け、防錆加工をしたものや、帯電加工を施したものなんかもあって、『紙なんだから無理でしょ』っていう固定観念が通じないものになってきてる感があるね。」

「そう言えば、この前クイズ番組で、『段ボールの元々の用途は何だったでしょうか?』っていう問題が出てましたよ。」
「え?それ、知らないな。何だったの?」
「え~。簡単に答えちゃったらクイズにならないじゃないですか。答えを聞く前に自分で考えてみて下さい?」
一瞬悔しそうな顔をしながらも、真剣に考え始めるロール先輩の姿を見て、『勝った!』とこぶしを握り締め、入社以来初めての勝利を噛みしめるシートくんなのでした。

(初掲載:2013年11月10日、加筆修正:2019年11月19日)

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