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新入社員シートくんとロール先輩の紙修行 ⑤ 『コピー用紙』はコピー用紙じゃない?

今日も頑張るシートくん。お客様からの見積もり依頼FAXに首を傾げます。
伝票のお見積り・・・『用紙は 複写用紙のA T <19> を使用のこと』・・・・・・
複写ってコピーのことだよね?コピー用紙で伝票を作るの?コピー用紙に19kgなんてあったっけ・・・?」

首を傾げ続けるシートくんを見て、ロール先輩が声を掛けます。
「どうしたの、シートくん?」
「あ、ロール先輩。お客様から伝票のお見積り依頼を頂いたんですけど、用紙がコピー用紙のA判19kgって指定なんですよ。でも、A判19kgって米坪34.5g/㎡くらいになりますよね?コピー用紙って、確か主流は米坪64g/㎡くらいの筈だし、そんなに薄いコピー用紙なんて・・・あるのかな、って・・・?」
言葉の途中でシートくん、ロール先輩が苦笑しているのに気づきます。
「・・・えっと、僕、また何か間違えました?」
「間違いというか・・・いっそ見事な変換というか・・・」
「・・・それ、絶対ほめてないですよね?」
「ははは・・・シートくん、お客様のFAXをもう一度良く見て。」
「?」
「お客様のご指定は『複写用紙』のA判19kg、でしょ?」
「?だから、コピー用紙の・・・」
「シートくん、『複写用紙』と『コピー用紙』は違うんだよ。」
「え?」
「もう一つ言うと、『コピー用紙』とコピーに使われる用紙も別物なんだよね。」
「え?え?」

「シートくん、入社の時の研修で紙の品目分類を勉強したでしょう?」「えっと、印刷・情報用紙の中に非塗工印刷用紙とか塗工印刷用紙とかがあって、更にそれが白色度で上級とか中級とかに分かれて・・・っていうのですよね?」「正解!」

【印刷・情報用紙の品目分類表】
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「あ、薄葉(うすよう)印刷用紙分類の中に、『タイプ・コピー用紙』っていう分類があります!」
「気がついた?これが印刷業界や紙業界で元々使っていた『コピー用紙』なんだよね。」
「そうか。現在、一般に使われているコピーの紙は、情報用紙分類の『PPC用紙』っていう名称で区別しているんですね。じゃあ、『コピー用紙』と『PPC用紙』って、どう違うんですか?」
「全く別物だから、用途も全然違うよ。コピー複写用紙ノーカーボン伝票なんかに使われる紙だし、PPC用紙コピー機やプリンターの用紙として使われる、成分的には上質紙に近い紙だしね。」
「コピー機に使わないのに、どうしてコピー用紙って言うんですか?」
「コピー機には使わないけど、コピーには使う用紙だから。」
「???」

「コピー用紙は薄くて透光性が高い紙。筆記性にも優れているから、コピーされるものの上に置いて、下の文字や図を書き写すのに使われるの。コピー機が無い時代には重宝されたんだと思うけど、今では需要も少なくなって、製図用紙とか伝票用とかで残っているくらい、かな。」

「今回、お客様から指定があった複写用紙は、カーボンコピーの伝票の上用紙として使われるのが普通。」
カーボンコピーって何ですか?」
「伝票の上の用紙と下の用紙の間にカーボン紙って呼ばれるインクの付いた紙を挟み込んで、上から筆圧がかかった時に下に写るように設計されたコピーのこと。」

「これも今はバックカーボン印刷の方が多いかな。」
「バックカーボン印刷?」
「複写用紙の裏面にカーボンを印刷して作る伝票。原理はカーボン紙を使う場合と一緒だね。」

「カーボンを使わない複写の仕方がノーカーボン紙を使う方法になるの。」
「それは勉強しました!A紙の裏にインクの入ったカプセルが、C紙の表に顕色剤が塗布されている用紙ですよね。上から圧力がかかるとカプセルが壊れてインクが出て、それが顕色剤と反応して文字が発色するんです。」
「完璧だね、シートくん」

「今でもノーカーボンじゃない伝票ってあるんですか?」
「あるよ。ノーカーボンは手も汚れないし使いやすいけど、光や油で発色した文字が消えちゃったり長期保存した場合に文字がかすれたりする欠点もあるの。ずいぶん改良はされたんだけど、それでもやっぱり長期保存が必要な書類、例えば裁判所なんかの官庁関係とか、金融関係の伝票なんかには、カーボン伝票が使われる傾向にあるみたい。」

「まあ、でも、各会社やご家庭にパソコンとプリンターが当たり前にある現代では、複写伝票自体がどんどん減ってきてるんだけどね。」
「パソコンとプリンター・・・つまり『PPC用紙』が使われてるってことですか?」
「そういう事。それに伴って、今ではシートくんみたいに、印刷屋さんや紙屋さんの人でも『複写用紙』と『コピー用紙』と『PPC用紙』を混同しちゃう新入社員さんがいるらしいよ。ましてや、紙に全然関係ない一般の人だと、コピー用紙以外の『コピー用紙』が存在するなんて、想像もできないみたい。
だから、印刷屋さんや紙屋さんの営業でも、一般のお客様と話をする時は『コピー用紙』って言葉を使って、PPC用紙について商談するんだけどね。」
「でも、手配や見積もりの時は、コピー機に使う『コピー用紙』なのか、伝票に使う『コピー用紙』なのか、両方を知った上で使い分けをしなきゃいけない、ってことですね。」
「その通り。」

「そう言えば、ある学校を担当している営業の人に聞いたんだけどね。」
「何ですか?」
「お客様から『コピー用紙』って注文をもらったんだって。で、前回の注文を調べたら、お届けしてたのが『新サンエースR100』っていう銘柄の再生PPC用紙だったんで、それをお届けしたら、クレームになっちゃったんだって。『うちが注文したのは『コピー用紙』だ、『再生紙』じゃない』って。」
「え?でも、再生PPC用紙だってコピー用紙ですよね?」
「どうやらその学校さんでは、『コピー用紙』っていうのは古紙の入っていない白いPPC用紙のことを指すんだって思ってたみたい。で、再生のPPC用紙が欲しい時は『再生紙』って注文するんだってなってたみたいで・・・でも、その学校さんだけかと思ってたら、そんな風に思ってる学校さんが結構あって、頭を切り替えるのが大変だったって、営業さん、笑ってた。」
「・・・なんか、混乱してきました・・・・・・」

「メールを送る時に『CC』とか『BCC』とか使うでしょ?」
「はい」
「あの『CC』って『カーボンコピー』の略なんだよね。」
「そうか。複写したみたいに、同じ内容を複数の人に送るから。」
「そういうことみたいだね。・・・元々の紙はもうあんまり使われなくなってるのに、こういう形で言葉だけ残るのが、なんか面白いよね。」
面白いってロール先輩は言うけど、それはまた、コピーじゃないコピーが増えていくってことで、より混乱するってことなんじゃないのかな・・・と、内心恐々とするシートくんでした。

(初掲載:2012年8月10日)

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