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【紙のソムリエ】シートくんとロール先輩の紙修行 28 紙の寸法と取り都合?~基礎知識復習③~

「ロール先輩、昨日はすみませんでした。」
明けて翌日、今度は始業直後にシートくんがやってきます。
「別に良いよ。」
苦笑して応じるロール先輩、「今日はどうしたの?」
小首を傾げるのに、シートくん、A4の紙を差し出します。
中身は、紙の寸法についてまとめたシートくんのレポート。
「寸法について教えたいことをまとめてみました。お時間のある時に添削お願いします。」
最初からこうすれば良かったんですよね、と反省するシートくんは冷静で、どうやら、先生役に選ばれた!という興奮は冷めたようです。
外回りに行ってきます、と出掛けるシートくんに手を振って、ロール先輩、レポートに目を通します。
「基本の寸法と、名称、意味・・・うん、良くまとまってるみたい。」
シートくん、頑張ったね。ロール先輩、目を細めて読み進めます。

シートくんの意外に几帳面な字が、喋り出しの台詞をつづっています。
『今までの学生生活やプライベートで、皆さんもA4サイズの紙、というのを使ったり受け取ったりしてこられたと思います。ホームセンターや百均など、色々なお店で買えるA4の用紙ですが、どこで買っても寸法が同じだということに気付いていますか?・・・当たり前でしょって?・・・でも、これが『当たり前』になったのは1929年、85年前のことなんです。』
『それ以前も、紙や印刷物の寸法として菊判や四六判、という名称はありました。でも、肝心の寸法が統一されてなくて、色々な大きさの菊判や四六判が混在していたそうです。これでは不経済だ、というので、紙の寸法、それから仕上寸法が統一されたのが1929年、幾つかの変更があって、今のJIS規格の紙の寸法、紙の仕上寸法に引き継がれているんです。』
『色々な紙の寸法がありますが、最低限覚えておいてほしいのは、この7つです。』

名称 読み方 寸法 備考
四六判 しろくばん 788㎜X1091㎜ 4/6判、とも表記する。読み方は同じ。
四六全判(しろくぜんばん)とも言う。
B判 びーばん 765㎜X1085㎜ B本判(びーほんばん)、B列本判(びーれつほんばん)、
B全判(びーぜんばん)とも言う。
菊判 きくばん 636㎜X939㎜ 菊全(きくぜん)という言い方もする。
A判 えーばん 625㎜X880㎜ A本判(えーほんばん)、A列本判(えーれつほんばん)、
A全判(えーぜんばん)とも言う。
H判 はとろんばん 900㎜X1200㎜ 包装紙の規格寸法として良く使用される。
L判 えるばん 80㎝X110㎝ 板紙の規格寸法として良く使用される。
K判 けーばん 64㎝X94㎝
65㎝X95㎝
板紙の規格として使用される。
菊判とほぼ同じ寸法だが、
関東K判(64㎝X94㎝)と関西K判(65㎝X95㎝)
があるので要注意。

『あと、紙の業界の慣習として

・洋紙はミリ、板紙はセンチの単位で寸法表記する
・ミリやセンチの寸法で表記した場合、(短辺)X(長辺)の表記ならT目、逆ならY目、つまり、
788㎜X1091㎜、なら紙は「四六判T目」、1091㎜X788㎜であれば紙は「四六判Y目」

ということがあります。聞いたことあるな、くらいで良いので、覚えておいて下さいね。』

『次に覚えておいてほしいのが、紙の仕上寸法です。これもJIS規格で決まっていて、A・B二つの系列に集約されています。皆さんの身近にある印刷物・・・チラシ書類雑誌・・・就職活動の時には、色んな企業のカタログもたくさん目にしたと思いますが、こういった印刷物の寸法にも、規格寸法があって、この、紙の仕上寸法に準じているんです。』

A系列 B系列
A0 1189㎜X841㎜ B0 1456㎜X1030㎜
A1 841㎜X594㎜ B1 1030㎜X728㎜
A2 594㎜X420㎜ B2 728㎜X515㎜
A3 420㎜X297㎜ B3 515㎜X364㎜
A4 297㎜X210㎜ B4 364㎜X257㎜
A5 210㎜X148㎜ B5 257㎜X182㎜
『このミリ寸法を見て頂くと分かる通り、A系列はA0(えーぜろ)、B系列はB0(びーぜろ)を始まりとして、長い方の辺を半分、また半分、としていくにつれて、A1、A2・・・と小さくなっていく、という関係にあります。』

『A4とかB5という寸法は皆さんも聞かれたことがあると思います。最低限この二つを覚えていれば、後の寸法は長辺を半分にしたり、短辺を2倍にしたりすることで求められるから便利ですよ。』

『印刷物の寸法は紙の仕上寸法に準じている、ということで、例えばA4の議事録なんかは210㎜X297㎜、つまりJISA4に仕上げますし、文庫本の規格はA6判、105㎜X148㎜になります。これは、A4ならA判の紙を8等分、A6ならA判の紙を32等分することであまり無駄が出ず、効率良く取れる寸法になっています。』
『印刷物を作成する時、どの印刷機を使うかによって、どの寸法にどういう順番で原稿を配置するかを決めますが、これを『面付け』と言います。この時、面付けに従って、使いたい紙に使いたい寸法があるか、どんな寸法に切ってもらえば面付けが上手く行くか、などを考えますが、これを『紙の取り都合』を調べる、と言います。紙の無駄が少ない、効率の良い取り方ができることを『取り都合が良い』、その反対で無駄が沢山出る場合を『取り都合が悪い』という言い方をしたりします。』
『例えば、同じA全判の紙からA4の印刷物を作る場合でも、面付け、つまり原稿の配置の方向を逆にするだけで、紙の取り都合は変わってきます。』

『普通は紙の取り都合がどうしたら一番良くなるか、つまり、どうしたら無駄が出ないか、を考えて面付けをします。紙の取り都合が悪ければそれだけたくさん紙が必要になり、コストが上がってしまうからです。』

仕上がりJISA4のフライヤーを4,000枚作成する場合(予備紙やヤレは考えないとして)

A全判に8丁付けて印刷する面付けだと A全判に6丁付けて印刷する面付けだと
A全判1枚から8枚のフライヤーができることになるので、
4,000/8=500枚で
原紙を500枚手配すれば良い。
A全判1枚から6枚しかフライヤーができないことになるので、
4,000/6=666.666・・・で
原紙は667枚手配する必要がある。
仮にA全判1枚100円の紙だとすると
500枚X100円で紙代は50,000円 667枚X100円で紙代は66,700円

『ただ、あえて取り都合が悪くても、通常とは逆で面付けすることがあります。それはどんな場合かというと・・・ああ、もう時間なので、明日までの宿題にしますね。一度考えてみて下さい。』

夕方、外出から戻ってきたシートくん、いつになく落ち込んでいるロール先輩を発見します。
「先輩、どうしたんですか、どんよりして?・・・はっ!もしかして、僕の原稿、そこまでダメでしたか?!」
「いや、内容は大丈夫。分かりやすくて、喋る順番も原稿の通りで良いと思うよ。」
内容は良いんだけどね・・・更に落ち込みに拍車をかけるロール先輩。訳が分からずおろおろするシートくんの肩を、背後から小さな手がぽんぽん、と叩きます。
「パレット先輩・・・ロール先輩、どうしちゃったんですか?」
「良いの。今はそっとしておいてあげて。」
「でも・・・」
「うーん、じゃあ、ヒントね。・・・シートくんの原稿、あれ、先生役のモデルはロールちゃんなの?」
「え?いえ?意識してませんでした。・・・ああ、でも、ロール先輩ならこんな風に喋るかな?って思いながら、原稿書いてたかも・・・」
「原因はそれ。・・・紙で言うと、自分では界面活性剤のつもりが、ポリアクリルアミドだった、みたいな?」
「・・・仰ってることは分かりませんが、やっぱり僕の原稿のせいってことですね!」
先輩すみません、僕そんなつもりなくて、ああ、でも、そんなつもりってどんなつもりなんだろう・・・自己嫌悪で錯乱するシートくん、パレットちゃんの表情を目にする余裕もなく、ひたすらロール先輩の気分を浮上させるのに必死になるのでした。

(初掲載:2014年7月10日、加筆修正:2019年12月5日)

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