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【紙のソムリエ】シートくんとロール先輩の紙修行 87 代替品を探すときは①

 新入社員研修を終え、紙の仕入れに携わるコマキさん。電話の前で浮かない顔をしているのに、シートくんが声を掛けます。
「何か問題?」
「用紙が確保できないのです。紙屋さんも今、在庫が足りないみたいで。」
 ありませんという返事しか聞けなくて、と眉間にしわを寄せる姿に、
「代替品は聞いてみた?」
とシートくんがアドバイスします。
「代替品?」
「欲しい用紙が確保できるのがベストだけど、どうしても無い時は
 ①同じ銘柄、同じ米坪の別の寸法
 ②同じ銘柄の近い連量のもの
 ③同じ銘柄の目なり違い
 ④同じ品種の別銘柄
といった形で、代わりになる商品を探すんだ。紙屋さんの方からも提案してくれるけど、自分の方からも『じゃあ、代替として○○はありませんか?』と聞けた方が、紙屋さんの捜索範囲が広がって、用紙が確保できる可能性が高まるから。」
「代わりになるものはありませんか?と声をかけるだけでも良いのですか?」
「それでも良いけど、例えば紙屋さんの方から、『四六判の70kgはありませんけど、A判の57.5kgならあります』と言われた場合、コマキさんはどうする?」
「おね・・・ロール課長に『A判の57.5kgで見つかりました』と報告します。」
「それだけだと、ロール先輩から『それじゃあだめ』って言われる可能性があると思うけど、コマキさんは何がダメなのか分かる?」
「・・・これかな、と思うのはあるのですが。」
「じゃあ、これかな、を確信に変えるために、一つ一つ説明していくね。」

1.寸法と連量

「紙は製紙メーカーで巻取の形で出来上がって、それが小さい巻取や『平判』と呼ばれるシート状に加工される。トイレットペーパーの大きいのみたいなものから、マスキングテープみたいに小さな巻取や、コピー用紙みたいに1枚1枚カットされたものができてくるとイメージすると分かるかな?」
「分かります。それで、出来上がってくる小巻や平判には、規格寸法が決まっているのですよね?」
「そうだね。とりあえず平判に限定すると、どんな規格寸法があるか覚えてる?」
「最低限、

 だけは覚えなさいと教わりました。」
「H判は包装紙の、L判は板紙のサイズだから、印刷用紙に限ると上の4つだね。もちろん規格寸法はほかにもあるし、輸入紙やオリジナル製品だと全然違う寸法のものもあるけど、日常見かけるチラシやリーフレット、本、カタログといった印刷物は、四六判からA判までの4つの寸法の用紙を使っているものが多い。だから製紙メーカーさんも、一般的によく使われる上質紙やコート紙では、同じ厚さで四つの寸法の既製品を用意していることが多いんだ。例えば厚さが6パターンの場合、6X4で24アイテムの既製品が用意されている。その厚さと寸法の関係を表にしたものが、」
「連量表、ですね。これも最低限、

 は覚えなさいと言われました。」
「計算でも出るけどね。

米坪(べいつぼ) ある紙の1平方メートル当たりの重量(g/㎡)
連量 1連(紙なら1,000枚、板紙なら100枚)当たりの重量

ということが分かっていれば、例えば、紙で四六判の米坪64.0g/㎡なら?」
「四六判は788mmX1091mmだから
 ①四六判1枚の面積は0.788X1.091で約0.86平方メートル。
 ②米坪64.0g/㎡は1平方メートル当たりの重量が64.0gということだから、
 四六判1枚の重量は64.0X0.86で55.04g。
 ③連量は紙1,000枚の重量だから55.04X1000で55.04kg
 ということですね。」
「正解。付け加えると、連量は小数点第1位を二捨三入七捨八入で丸めるって決まってるから、この場合は55kgになる。でも一回一回そんな計算をしていたら商談が進まないから、最低限の連量表は覚えてね、って話だよね。」

2.連量表を活用する

「で、この連量表を活用すると、代替品を探すときの順番が分かってくる。例えば、上質紙のプリンスの四六判の70kgが必要な時は?」
「最初にプリンスの四六判70kgを探します。それが無い時には、
 ①同じ銘柄、同じ米坪の別寸法=B判の67.5kg、菊判の48.5kg、A判の44.5kg など
 ②同じ銘柄の近い連量のもの=四六判の55kgや90kg、菊判の62.5kg など
 ③同じ銘柄の目なり違い=T目が欲しくても無い場合はY目 など
 ④同じ品種の別銘柄=同じ上質紙でメーカーが違うユトリロやnpi上質 など
を探すということですね。最初にシート先輩が言われた『四六判70kgが無くてA判57.5kgはある』っていうのは、連量表の段がずれてる、つまり、厚さが違うということ。ロール課長に報告する時は、まず、同じ厚さの44.5kgや菊判の48.5kgも探したけど無かったから、という前提が必要、ということでしょうか。」
「正解だね。ただ、③の目なりに関しては注意が必要なことがあるから、それはまた、次の機会に説明するね。」

「まあ、普通に必要な用紙が手に入れば、こんな苦労をする必要はないんだけどね。」
「今は需給がひっ迫していると、先日先輩からお聞きしました。今の状況はいつ頃解消されそうですか?」
「製紙メーカーさんの機械の設備点検が終わる夏過ぎには、生産は計画通りに戻る見通しらしい。でも、需給はね。メーカーさんは需要の減少に合わせて供給も減少する計画をしているけど、需要減のスピードがそれを上回れば需給はまた緩む可能性もある。物が入手できないことでデジタル化が加速するとか、流通段階で多めにモノを確保しようとする動きがモノ余りにつながるとか、想像だけならいろいろできるから、状況をちゃんと見極めないとと思うよ。」
「そうなのですね。勉強になります。」
 コマキさんの尊敬の目に、まんざらではないシートくん。
「あれで口元がニヤニヤしてなければ、良い先輩なのにね。」
「無理だよ。シートくんだもん。」
 先輩たちの声に思わず口元を押さえるシートくんなのでした。

(初掲載:2019年7月10日)

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