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【紙のソムリエ】シートくんとロール先輩の紙修行 40 基本?究極?~『白色度』と『白さ』~

「ただいま戻りました・・・」
ある日の夕刻、外回りから戻ってきたシートくん、何だか元気がありません。理由を尋ねるロール先輩に、小さな声で、「かっこ悪いって言われちゃって・・・」。クールビズの服装をお客様に厳しくチェックされてしまったようです。
「クールビズって、ただノーネクタイってだけじゃダメなんですね・・・」
「ああ、まあ、確かに、いつものワイシャツでネクタイ外してジャケット脱いだだけ、って風だと、着方によっては、老けて見えたり、だらしない印象になるかも。」
その言葉に一層落ち込むシートくん。慌ててロール先輩、声を大きくします。
「あ、でも、やっぱり白いシャツって基本だしね!」
「基本って最低限ってことですよね・・・」
「違うよ!・・・えっと、ほら、上質紙って、一番基本の紙でしょ。平滑性が高くて、印刷作業性が良くて、再現性もそれなりで、本文用紙にもチラシにも表紙にも使われたりする。お手頃価格でコストパフォーマンスも良い。一番便利で使いやすい紙ってことじゃない。」
「便利・・・使いやすい・・・それなり・・・・・・」
何を言ってもさらに落ち込んでいくシートくんに、ロール先輩も黙り込みますが、
「そう言えば、以前お客様に言われたんですけど。」
シートくんがふと顔を上げます。
「同じ上質紙で、白色度が同じなのに、白さは全然違うんだねって。その時は他の話になってそのことは流れちゃったんですけど、考えたら変ですよね。そんなこと、あるんですか?」
「ああ、あるよ。」ほっとしてロール先輩が答えます。
「そもそも、『白さ』と『白色度』って基準が違うから。」
「?」

「『白色度』ってことは、白さを測る測定方法が決まってるってことですよね。」
「そう。色々あるけど、今、JIS規格で採用されているのは『ISO白色度(拡散青色光反射率)』って方法。すごく大雑把に説明すると、決められた照明を決められた状態で紙に当てた時に、光の反射率が何%かってことを測定して、白色度として表示する方法なの。」
「0%に近ければ黒く、100%に近いほど白いってことですね。」
「そういうことだね。でも、白色度が同じでも、人間の目に見える白さが同じとは限らない。」
「それが、『白色度』と『白さ』は違うってことなんですね。でも、どうしてそんな違いが出て来るんですか?」
「蛍光増白剤とか着色料のせいだね。例えば・・・」

蛍光増白剤 いわゆる、『蛍光染料』。添加することにより、人間の目には見えない紫外線を吸収し、青色の光に変えて発光する。見えないはずの青紫系の色調が補われ、目に入る光の量も増加することから、人間の目には白さが強調されて見える。
着色料 「青っぽい白」「赤っぽい白」「黄味がかった白」などのように、色々な表現の白さを再現するために添加される。青が黄色の補色関係にあることから、青い染料を少し添加すると黄色みが打ち消され、人間の感覚では白く見える効果がある。

「ちょっと詳しい話をすると、『ISO白色度』では、光源に『CIEイルミナントC』っていうものが採用されているの。これは昼の屋内の光に近い光源。紙って、本にしても他のものにしても、自然光で見るよりは屋内の電灯の下で見ることが多いでしょ。だからこの光源が採用されているらしいんだけど、この『CIEイルミナントC』の採用では、蛍光染料の影響が白色度にはっきり反映されにくいの。」
「『白色度』が同じなのに『白さ』が違う理由の一つ、ってことですね。」
「もっと蛍光染料の影響がはっきり分かる『D65白色度』っていうのもあるんだけど、今の日本では『ISO白色度』の方が主流。ただ、同じJISでも、以前に採用されていた『ハンター白色度』はもっと『白色度』と『見た目の白さ』が離れていたらしいんだよね。それが、より近い『ISO白色度』に代わった、っていう経緯があるから、いずれは『D65白色度』に代わるっていうことがあるかもしれないけどね。」

「白く見せたくて蛍光染料を加えるのは何となく分かりますけど、白い紙を作るのに着色料で色を付けるって何だか不思議ですね。」
「ただ白ければ良いならそこまで必要ないだろうけどね。白紙面がどの程度、どんな風に白いかによって、当然上に乗ってくる印刷色の見た目が変わるし、印刷してある中身の印象まで変わってくる。つまり印刷適性が変わるってことだから、用途に最適で他社との差別化を図れる『白い紙』を作るには、どんな『白さ』の紙を作るか設計して、設計した『白さ』を安定して作り続けることが必要になってくるってことだね。」
「でも、それ、大変じゃないですか?例えば、昨日抄造した『青っぽい白』の紙と、今日抄造した『青っぽい白』の紙の『青っぽさ』が同じかどうかなんて、目で見ただけだと証明できないですよね。」
「そもそもシートくんが見てる『青っぽさ』と私が見ている『青っぽさ』が同じとは限らないしね。でも、そういう状態だと商品として成り立たないから、それにも測定方法があるの。これも詳しく説明しようとすると、とっても複雑な計算式が出て来るんだけど・・・シートくん、光の3原色って知ってる?」
「光の方は、赤、緑、青、ですね。」
「そう。じゃあ、何故光の3原色がこの3つなのかというと、そもそも人間の目の、色を見分ける細胞が3種類あって、それぞれこの、赤、緑、青の光の刺激に対応してる・・・つまり、この3つの波長の光の量を測定できるようになってるからなの。」

①人間の目の、色を見分ける細胞には3種類あり、それぞれ、長波長(赤)、中波長(緑)、短波長(青)の光刺激に対応している。
②物体が反射する光に各々の細胞が刺激を受け、その情報を脳に伝えることによって、物体の色が知覚される。
③赤の細胞が反応し、緑・青が反応しなければ物体は赤く見える。光が吸収され3つが同程度に反応しなければ物体は黒く見え、3つが同程度に強く反応すれば物体は白く見える。

「で、色を測定する機械は、この人間の目と同じ仕組みでセンサーが波長に反応して、赤・緑・青の波長の量を数値化するの。これに、表色系っていう、色の明るさや色合いで色を分類する方法を組み合わせて、『青っぽい白』の『青っぽさ』がどの程度かが数値化されるってわけ。もっと詳しく言うと分光測色方法と刺激値直読方法の違いとか、表色系の種類とか、赤の錐体細胞のピークの話とか、光源と視野の角度の問題とか・・・」
「えっと・・・とりあえず、色を数値化して測定する方法があるんだって理解で良いですか?」
「うん。その測定方法があるおかげで、紙を抄造する時、色のばらつきを少なくすることができる、って点だけ押さえておいてくれれば良いかな。」

「白い紙の白さにも色々あるんですね。」
「『究極の白』が売りのファンシーペーパーもあるしね。」
「ちょっと話はずれるけど、今話題の『エアラス』も白い印刷用紙ですもんね。他社と差別化しようと思ったら、白い紙でも色々やり様はあるってことでしょうか。」
話す二人の背後から、
「白いシャツでも工夫はできるってことだよね?」
パレットちゃんが可愛い声で割って入ります。
「あ・・・」
再び落ち込むシートくんに、
「例えば、着方とか、同じ白いシャツでもカットが違うとか。インナーに何を選ぶかだけでも印象違うし、ボタンで工夫することもできるしね?」
たたみかけるパレットちゃん。
「あ・・・えっと・・・そう言えば!JISには採用されてないけど、ISOにはもう一つ白さの指標があってね!」
輸入物のコピー用紙のwhitenessの表示を見ると、たまにびっくりすることがあるんだけどね!・・・話し続けながら、何とかパレットちゃんの攻撃をシートくんからそらそうと、顔を真っ赤にして奮闘するロール先輩なのでした。

(初掲載:2015年7月10日、この年の2月に『エアラス』が新発売となっています。加筆修正:2019年12月7日)

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