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【紙のソムリエ】シートくんとロール先輩の紙修行 24 近くて遠い?~包装紙と書道~

「はい・・・はい・・・えっと、ですから、ロール紙ですよね・・・え?・・・その寸法だと、ロール紙ではないのでは・・・」
先ほどから、少し困った顔で電話を続けるシートくん。受話器を置いて溜息を吐いた頃合いを見計らって、ロール先輩が声を掛けます。
「どうしたの、シートくん?」
「何だかお客様と話がかみ合わなくて・・・」浮かない顔のシートくん。
「書道にお使いになるロール紙と仰ったので、197ミリの6メートルの巻紙をご提案したんですが、御入り用なのはB4くらいの用紙らしいんです。じゃあ、ロール紙じゃあないんですね、って申し上げたんですが、いやロール紙だ、コピー用紙と同じ紙だと聞いた、って仰って・・・」溜息を吐くと「調べて折り返します、って切ったんですけど、どう調べれば良いんでしょうか・・・」
ふと目を上げると、ロール先輩、猫みたいな笑顔でシートくんを見ています。
「先輩?何か可笑しかったですか?」
「シートくんもすっかり業界人だなあって。」
「え?」
「多分、その話って、印刷や紙の業界が長くて、普段書道とは縁遠い人が一番勘違いしやすいんだよね。まあ、私も知らなかったし、偉そうなことは言えないんだけど。」
シートくん、大きく目を見開きます。
「じゃあ、先輩、今のお客様の探しておられる用紙のこと、知ってるんですか?」

「シートくんは、書道の紙って言ったら何を思い浮かべる?」
「和紙、ですね。書道半紙とか画仙紙とか。」
「私もそう。だから、書道用紙が欲しいって言われたら、まず和紙を当たって、その中でも、品質とかコストとかのご希望を聞いて紙屋さんに伝えて教えてもらったものをご提案すると思う。」
「品質か・・・にじみにくいのが欲しいって言われたんですけど・・・」
「にじむって、要するに、繊維と繊維の隙間に水分が入り込んじゃう現象だから、繊維と繊維の隙間が少ないものの方がにじみにくいんだよね。だから・・・」

にじみやすい にじみにくい
和紙と洋紙なら 和紙 洋紙
抄き方なら 手漉き 機械漉き
和紙の原料の中では 三椏・雁皮

「そうか。和紙より洋紙の方がにじみにくいんですね。」
「にじむことも毛筆+和紙の組み合わせの味だと思うし、寧ろ、『にじみやすいこと』を求めて用紙を選ばれるお客様も多いと思うけどね。でも、多分、シートくんの話から推察すると、お客様は練習用ってことで、安価で大量に使える、にじみにくい用紙を探していらっしゃるんじゃないの?」
「その通りです。かな練習用で、なるべく安くて、にじみにくいのをって言われました。」
「そういうご要望の方にね、一部で御使用頂いているのが・・・」
「頂いているのが?」
「・・・純白ロールなんだよね。」
「ああ、ロールって、純白ロールのロールのことなんですか!・・・でも、純白って、包装紙ですよね?」

「その発想がね、業界人だなって。私たちは包装紙の一品種っていう風に純白ロールの用途を決め込んじゃってるけど、実際、純白の用途はそれだけじゃないでしょ?」
「確かに。包装紙以外にも、箱の中敷きとか緩衝剤なんかにも使いますもんね。」
日めくりカレンダーの用紙とか製図用紙なんかにもね。白くて薄くて丈夫で、表つるつる裏はざらざら、薄い割には裏写りもしにくい、っていうのが純白でしょ?それでいて、和紙に比べたら価格的にお値打ちにできる。書き味とか芸術性とかでは和紙にはかなわないけど、毎日のかなの練習使いには十分ってことで、純白ロールが使われてるものがあるみたい。」
「お客様が『コピー用紙と同じ紙』って仰ったのは、『洋紙だから』って意味なんでしょうか?」
「そうかもしれないね。直接聞いたわけじゃないから何とも言えないし、仮にそうだとしても、純白とPPCが同じって言われてしまうとちょっと頷けない感じだけど・・・それに、書道用紙で表つるつるだからって、全てが純白とは限らないし、ロール紙って言葉が本当のロール紙、つまり巻いた長い紙を指すこともあるんだけどね。」
「えっと、混乱してきました。つまり・・・

書道で「かな練習用のロール紙」と言う場合 包装紙の『純白ロール』が使われている洋紙
雁皮や三椏、パルプが原料の和紙で、かな練習用に加工されたもの
書道で「ロール紙」と言う時には 『純白ロール』等の練習用紙を指す場合
書道パフォーマンス等に使用される大判の巻紙を指す場合

・・・があるってことですか?」
「そういうこと。」

「まあ、今までのはかなり大雑把な話で、更に細かく言うと、同じ和紙でも産地とか原料とか加工によって全然特色が違ってくるんだって。例えば、同じ国内産の画仙紙でも、甲州産はにじみがあって、因州産はにじみが少ないとか、これが中国や台湾、韓国の画仙紙だとまた違ってくるとかね。どれが良いとか悪いとかじゃなくて、お客様がどんな紙や書き味、仕上がりを求めていらっしゃるかによるから、どれをお勧めするかは、電話だけではかなり難しいかもね。」
「練習用か清書用かでも違うし、かな用か漢字用かでも違う。漢字用・かな用の中でも、更に色々紙があるってことですね。」
「そういうこと。それに、色紙や短冊なんかだと、金箔や染めた繊維を使って装飾した用紙なんかもあるから、お客様のご要望次第で、ご提案できる紙はどんどん多くなっていくと言えるんじゃないかな。」

「あと、寸法にも注意しないと。『全紙』と『半切(半裁)』と『半紙』っていう寸法があるんだけど、書道の全紙と一般の紙の全紙は大きさが違うし、書道用紙の中でも、『半切』と『半紙』は、それぞれ寸法が違うんだよ。」
「和紙って難しいけど、奥が深くて面白いんですね。それに、洋紙と和紙って全然違うものだと思ってたけど、意外に距離が近い部分もあるのかな、って思いました。」
「確かにね。そもそも、書道パフォーマンス大会で使ってる紙だって・・・」
話し続ける二人のところに、書類を持った総務のパレットちゃんが近づいてきます。
「お話し中ごめんね?・・・シートくん、ここ、また日付忘れてるよ?」
「え?・・・うわあ・・・いつもすみません・・・」
「いつもいつも、かな。」
「・・・いつもいつもすみません・・・・・・」
「・・・そう言えば、シートくん、純白ロールってお菓子の敷き紙なんかにも使うって知ってた?」
もうすぐホワイトデーだねぇ、ロールケーキなんか良いよねぇ、と笑うパレットちゃんに、『一体どこから聞いてたんですか、先輩!?』と内心悲鳴を上げるシートくんなのでした。

(初掲載:2014年3月10日、加筆修正:2019年12月5日)

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