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【紙のソムリエ】シートくんとロール先輩の紙修行 44 似た紙はどれ?~ファンシー②~

「これか・・・でも微妙に違う・・・・・・」
紙の見本帳置き場で現物と見本帳を比較しながら首をひねるシートくん。声を掛けたロール先輩に、受注した冊子の表紙の紙が分からない、と相談を持ちかけます。
「お客様に前回と同じ紙でと言われたんですが、もう作業伝票が残っていないので、現物をお借りして見比べているんです。」


手には『OKミューズコットン』の見本帳。
「この『OKミューズコットン』が似ているように思うんですが、色や模様の具合が微妙に違うんですよ。」

「色焼けやロットブレの可能性もあるけど、ひょっとして・・・」
自席に戻ったロール先輩、引き出しから別の見本帳を取り出し比較します。
「ああ、これですね。」微笑むシートくんと、「やっぱりこれか・・・」残念そうなロール先輩。
「これだと何か不都合が?」ロール先輩が持ってきたのは『トーヨーコットン』の見本帳でした。
「『トーヨーコットン』は2008年に廃判になっているの。だから基本的にはもう手に入らない。」
「ああ、なるほど。」納得したシートくん、すぐに笑顔でロール先輩を振り返ります。
「でも、現物が『トーヨーコットン』で廃判になった商品だって分かっていれば、お客様に説明ができますから。こちらの『OKミューズコットン』はまだ手に入りますよね?」
「うん、それは大丈夫。」
「じゃあ、こちらの中から選んで頂くよう、提案してみます。」有難うございます、と頭を下げたシートくん、「似た紙が分かっていると楽ですね・・・」と呟くのに、ロール先輩、大きく頷きます。
「ファンシーペーパーって種類が多いから全部を把握するのは難しいけど、良く使われる紙くらいは、どれとどれが似ているか分かっていた方が良いと思うよ。」
「良く使われると言うと・・・?」

「一番有名なところだと、『レザック66』に代表される『皮しぼ柄』かな。これは似たものも多いから、覚えておくと便利。」

レザック66 皮しぼ柄の代表銘柄の一つ。四六判Y目5斤量50色以外に、2斤量7色のみ菊判Y目がある。
テンカラーエンボス皮しぼ 四六判Y目5斤量33色と、菊判T目3斤量18色のラインナップ。
テンテンレザー 四六判Y目4斤量だが、レザック66やテンカラーエンボスより連量が小さいのが特徴。
OKゴールデンリバー 四六判Y目70kgのみだが、この薄さで25色あるのが他と違う特徴。
コープ ハトロン判の皮しぼ柄として有名だったが、規格変更があり、現在は四六判Y目と菊判T目の5斤量4色のみ。米坪設定にハトロン判だった頃の名残が残る。
ニューカラーマリアン L判Y目、板紙規格の皮しぼ柄。紙腰がしっかりしており、パッケージ向き。

「柄は似ているけど、一つ一つ特徴が違うんですね。」
「その辺りが覚えておくと便利な所だよね。柄が似ているファンシーペーパーを覚えておけば、

①同じ柄でもっと薄いもの、厚いもの、色違い、価格設定の違うもの、などを提案できる。
②指定の商品が在庫切れ、あるいは廃判になった時などに、代替品を提案できる。
③同じ柄の、商品ごとの違いを提案して選んで頂ける。

っていう対処がスピーディにできると思うよ。」

「他にも、似ていて有名なファンシーペーパーってあるんですか?」
「例えば、色カード系だと、

Aカード OKACカード ケンラン テンカラー

色数が少ないんで、『色』カードって言って良いかどうか悩むところだけど、

彩美カード サンピーチ

も白以外の色がある厚物だね。あと、他の色カードとは色の系統が違うところで、ディープマットとGAボード-FSも覚えておいて。どちらも、上品な深い色がある厚紙だから、他の色カードとは違う色合いを探しておられるお客様にはおすすめだと思うよ。」
「他の柄物で似たものだと?」
「たくさんあるけど、例えば、さっきのコットン系だと

トーヨーコットン(廃判) 色ケント(廃判) OKミューズコットン STカバー

布の風合いってことならジャンフェルトも仲間って言えると思う。

同じコットン系でも、簀の目の感じじゃなくて、毛の入り具合が似てるかどうかなら、

OKミューズコットン 新・草木染
新草木染・ハーブ
アングルカラー アンドレ

とかかな。そもそもの紙の開発段階からの因縁で、マーメイドと五感紙、ヴァンヌーボシリーズとミスター・ミセスシリーズにエアラス、なんて例もあるし、挙げていくときりがないかも。時間がある時に見本帳を見て現物を確認しておくと楽しいと思うよ。」

ロール先輩の話を聞いて、見本帳をぱらぱらとめくるシートくん、
「似た紙で同じ色名でも色は違うんですね。」と呟きます。
「そうだね。『トーヨーコットン』と『OKミューズコットン』は色名がかぶるのも多いけど、色合いはそれぞれに違う。例えば『OKミューズコットン』の『こいあお』は『トーヨーコットン』の『こいあお』よりくすんだ色だから、場合によっては『こんじょう』色を提案した方がお客様のニーズに合っているかもしれない。」
「『べに』もそうですよね。『OKミューズコットン』の『べに』はピンクの色味が強いから、『トーヨーコットン』の『べに』の深みが大切なら『こいあか』を提案した方が良いように思います。」
「色は特に、どの光の下で見るかでも違うから、色名だけで決めずに必ず現物を確認してね。」
話し続ける二人の傍をパレットちゃんが通りがかり、「あれ?」と首を傾げます。
「珍しいね、この二人の組み合わせって。」
「そうですね。いつもはシート先輩がロール先輩と話されていることが多いから。」
「と言うより、あっちのシートくんがロールちゃんを頼り過ぎなんだと思うけど。」
と話す傍から「ただいま戻りました!」と元気な挨拶に続いて「あ、あれ?ロール先輩、もう帰っちゃいました?!」と焦る声が聞こえてきます。
「ほらね?」と肩をすくめるパレットちゃんに穏やかな苦笑で応じるのは、シートくんと同じ姓の、1年後輩のシートくん。
「同じ色名でも色は違う・・・」と口にしかけて、言い過ぎか、と唇をつまむロール先輩なのでした。

(初掲載:2015年11月10日、加筆修正:2019年12月9日)

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