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【紙のソムリエ】シートくんとロール先輩の紙修行 70 FSCって?

「新年明けましておめでとうございます。今年も宜しく御願い致します。」
「明けましておめでとうございます。今年も新入社員様、若手社員様向けのこのページを、宜しく御願い致します。」
「良いお正月でしたか?」
「のんびりできたかな。シートくんは?」
「初詣とか買い物とかなんだかんだで忙しかったような・・・あ、でも、良い初夢見ましたよ。僕、オリンピックに出てました。」
「2月に冬季のオリンピックがあるから、その影響かな?」
「2020年までだって、もう2年しかないですしね。・・・そう言えば先輩。オリンピックの影響で、昨年ぐらいからまたFSCが話題になっていましたね。」
「そうだね。残り2年になって今年もFSCが注目を浴びるだろうし、新年1回目は森林認証の復習にしようか。」

1.森林認証

「森林認証って、ヨーロッパから広まった考え方なんでしたっけ。」
「そうだね。もともとヨーロッパは環境運動が盛んで、その流れから来たみたいだね。」

「企業の森林管理が適切なことを保証してくれる第三者機関が出来て、森林認証を取得していることが企業のイメージアップや他社との差別化につながるような土壌もできてきたってわけですね。」

2.森林認証機関

「森林認証機関として有名なのは・・・」
「『FSC』と『PEFC』ですよね。覚えてますよ。」

FSC 森林管理協議会。1993年に設立された非営利組織。
森林や林産物に関し、国際的に信頼される、厳密な管理基準を設定している。
PEFC 元は欧米の小規模な林業家の森林認証を行う目的で、各国独自の森林認証制度を相互に承認する国際的な統括機関として1999年に発足。
日本独自の森林認証である『SEGC』は2014年にPEFCに加盟。2016年に相互認証を受け、世界に通用する森林認証となる。

「もともと日本の製紙メーカーは、昨今の風潮に関係なく早い時期から森林認証を取得していたんだよ。日本の製紙工場として初めて、三菱製紙の八戸工場がFSC認証を取得したのは2001年で、その後日本製紙も王子製紙も次々にPEFCやSEGCの認証を自社工場や自社林で取得して認証紙を生産していたしね。ただ・・・」
「ただ?」
「森林認証の考え方自体が日本ではあまり認知されていなかったから、せっかく認証紙を作れる環境は出来ていても、広く利用はされていなかったの。それが、企業のグローバル化が進んできて大手企業や大手小売店が社内用で認証紙を使い始めて、それを自社のイメージアップ戦略につなげたりもして、日本でも森林認証っていう考え方が周知されてきたんだよね。」
「オリンピックの影響もあるんですよね?」
「そうだと思う。2010年のバンクーバーで、選手村なんかの建設にFSC森林認証材が利用されたし、12年のロンドンでも16年のリオでもFSC認証材が使われたの。2020年の東京オリンピックでは、組織委員会が調達する建築材料や物品に関して『持続可能性に配慮した調達コード』っていうのが定められていて、木材に関してはFSC、PEFC、SGECの認証材は適合度が高い、つまり持続可能性に寄与してて優先的に調達されますよって明記されてるんだよね。紙についての特別な調達コードはまだ発表されてないんだけど、当然準ずるものになるってことで、去年あたりから、これまでFSCを取得していなかった工場やメーカーでの取得が相次いでいるし、FSC認証取得をうたった新製品の発表も続いているの。」

3.森林認証の段階

「じゃあ、メーカーさんが森林認証を取得している紙を使えば、印刷物にも森林認証品ってうたって良いんですか?」
「そういうわけじゃないよ。えっと、森林認証には2つの段階があるって説明したのは覚えてる?」
「『FM認証』と『CoC認証』ですね。」

FM認証 Forest Management認証。製紙メーカーや林産企業など、森林を所有・利用している企業などが、対象の森林を持続可能な形で管理・経営しているかどうかを評価・認証する制度。
CoC認証 Chain of Custody認証。FM認証された林産物を非認証製品と分けて適切に管理し、加工、流通させているかを評価し、認証する制度。

「最初のもととなる森林の管理が適切かを評価・認証するのがFM認証で、その認証された木材をちゃんとそうじゃないものと混ざらないように運んだり加工したりして、製品の原料が認証材だって証明できるようにしているかを評価・認証するのがCoC認証。」

「最終製品が森林認証と認められるには、出発点の森林から最終加工に至るまでの全ての工程で森林認証を取得している必要があるの。メーカーさんが取得していても紙屋さんが取得していなかったら駄目だし、もちろん印刷会社さんも認証を取得していて初めて製品も認証品と認められるの。」

4.森林認証の取得方法

「森林認証を取得するにはどうすれば良いんですか?FSCさんに直接連絡するとか?」
「違うよ。FSCの場合は、FSCが認定している認証機関があるの。認証費用の見積もりとか、実際の審査とか、評価をしてくれるところ。まずはそこに連絡して、見積⇒依頼⇒審査⇒判断⇒認証取得って流れになる。もちろんシステムに不備があれば直してからしか認証されないし、毎年1回、認証機関の監査を受けて初めて認証を維持できるんだけどね。」

「いろいろ大変ですよね。認証を取るのも維持するのも。」
「でもその分メリットもあることだしね。何より、森林資源を維持できるか、後の世代にも残していけるかって考えると、それに貢献できる一つの方法としても有効なんじゃないかな。」
「そこまで先のことは考えられないけど、とりあえず2年後のオリンピックに貢献できるってことで満足しておきます。」
「そう言えば良い初夢ってどんな夢だったの?」
「僕、フィギュアスケートの選手なんです。ペアで出場して優勝していました。」
「それはなんだか幸先の良い夢だね。」
「リフトで持ち上げられて、ふわって浮くのがなんか楽しくて・・・」
「え?そっちなの?」

※華陽紙業株式会社はFSCのCoC認証を取得・維持しています。
※上記文章の作成のため、FSCジャパン様、各製紙メーカー様のサイトの記述などを参考にさせて頂きました。

(初掲載:2018年1月10日、加筆修正:2019年12月11日)

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